ビークルアシストAPIを活用し、交通の問題解決に挑む(恵那バッテリー電装株式会社)
目次
地域とクルマに寄り添い50年
送迎バス利用者の不安と不満を解消する「MOQUL」の誕生
小さな事業所でも導入しやすいサービス
ビークルアシスト APIがもたらした高い実用性
ビークルアシストAPIを活用し、交通の問題解決に挑む
地域に根ざした自動車修理・整備で信頼を築いてきた恵那バッテリー電装様。近年では自動車のテレマティクスサービスの開発にも力を入れており、中でも2017年にリリースした送迎バスの現在地確認システム「MOQUL(モークル)」が全国から注目されています。そのシステムにビークルアシスト APIをご活用いただいており、今回は開発にあたった山口社長にお話をうかがいました。
地域とクルマに寄り添い50年
岐阜県恵那市で父が創業し、地元企業の車を中心にバッテリーなど部品の販売や車の修理・整備を行ってきた会社です。平成18年に中津川市に移転、翌年に私が経営を継いでからはテレマティクスサービスの開発も始めました。私は元々電機商社で工場の生産ラインや大規模ビル、テーマパークのアトラクションなどで利用する様々なシステムの開発を手がけていました。施設内の各所から情報を取得して加工するというシステムは今で言うIoTの先駆けですね。その頃に身につけたエンジニアとしての「勘所」を活かしながら、現在は「MOQUL」という送迎バス現在地確認システムのパッケージを自社で開発・販売しています。
送迎バス利用者の不安と不満を解消する「MOQUL」の誕生
ある日、幼稚園から「園バスの利用者にバスの現在位置を知らせたい」という相談がありました。バスが遅れると園児や保護者は長い間、外で待たなくてはなりません。子供にとっても大変ですし、大人も「もう行ってしまったのかな」と不安になります。結果、バスを待つ保護者から園に問い合わせが多く来るため、その対応にも追われてしまいます。
それなら、リアルタイムでの車両位置を取得し、簡単に確認できるシステムをつくれば、この問題を解決できると考えました。メールやWebを使った類似のシステムは既にありましたが、一斉にプッシュ通知して不要な人に何度も届いたり、情報を取得しに行くまでの操作が煩雑だったり、利用するための登録に手間がかかったりするなど、使い勝手のよさが欠けていました。
そこで多くの保護者の方が使い慣れているスマートフォンアプリ「LINE」に着目しました。また以前から注目していた、リアルタイムに位置情報が取得できる、パイオニアのビークルアシスト APIを使うことを考えました。利用者が「LINE」アプリでバスの現在位置を問い合わせると、API連携で車載機から送られてくる位置情報を取得。その位置情報を「LINE」のBot機能を使って利用者に自動で返事をする仕組みです。
早速プロトタイプを開発し、テストできる場所について地元の中津川市役所に相談したところ、コミュニティバスで実証実験できることになりました。結果は上々で信頼性も問題なく、その後いくつかの使い勝手や操作画面の改良を経て、2017年8月に幼稚園の送迎バスでサービスをスタートさせました。「MOQUL」を使っていただくことで、園児と保護者の方は丁度よいタイミングにバスの乗車場所に向かえるとともに、逆にバスの方も園児を待って停車することが減るなど、定刻運行にも寄与することになったのです。
小さな事業所でも導入しやすいサービス
現在はコミュニティバスや幼稚園バスの他に企業の送迎バスでもご利用いただいています。岐阜県内の24時間操業の工場では人材確保のために2017年から送迎の巡回バスを導入したものの、「ダイヤ通りにバスが来なかった」という声がありました。「もう来るかな?」「もしかして行ってしまった?」と不安とともに待つのは利用者にとって不満でした。「MOQUL」を採用いただいたことで、真冬の寒い中、深夜にいつ来るかわからないバスを待つ思いをせずに済むようになったのです。
このように幅広いお客様に「MOQUL」をお使いいただいているのは、使い勝手の良さに加えて、バスロケーションシステムをゼロから開発するよりも導入コストやランニングコストを低く抑えられることも一因と思っています。1台からでも、小さな事業所でも、導入しやすいサービスを実現しています。
ビークルアシスト APIがもたらした高い実用性
「MOQUL」はビークルアシスト APIを利用していますが、開発当初いろいろ調査したところ、車載機から送られてくる位置情報をAPIで取得できるのはビークルアシスト APIだけでした。さらに車両の位置情報の更新頻度も高く、リアルタイム性に優れていることに加え、サーバーのレスポンスも良いなど、実用性に優れています。そもそも自車位置の精度が高いのはカーナビで実績あるパイオニアならではだと思います。実装作業は一般的なAPIと同様なので問題なく進み、その分ユーザーインターフェースの調整に時間を使えました。テキストベースでの操作からキャラクターをタップするだけの操作に変えたり、キャラクターをバスごとに変えられるようにしたり、楽しさも意識しながら開発しました。
ビークルアシストAPIを活用し、交通の問題解決に挑む
ビークルアシストを使うメリットは、バスの現在地確認システムとしてだけでありません。お客様に話をしにいくと、運行管理もできて、しかもドライブレコーダーまで設置できるというトータルなメリットに納得されます。例えば軌跡管理機能で決められた時刻に決められた場所へバスが行っているか管理者のパソコンで確認できます。また急ブレーキ、急ハンドルなどの危険運転の回数を記録・分析できるので、乗務員さんの安全運転意識の向上もサポートしてくれます。そしてドライブレコーダーの映像まで管理できるとなれば、前向きなお返事をいただくことが多いです。北海道から沖縄までお問い合わせをいただいています。
今後はお客様の声を反映し、「MOQUL」に「あと何分?」を追加したり、ドライブレコーダーの動画を活用した路面や天気などのリアルタイムな状況確認機能などを検討するとともに、さらには他社システムとのより一層の連携や、大規模イベントのシャトルバスへの展開など、ビジネスの幅を広げていきたいと考えています。
もっと先には、都市部の交通渋滞や地方の交通空白地帯の解決に、ライドシェアや乗合タクシーといった半公共的な交通が求められていくと思います。その実現にはインターネットにつながることが必須でしょう。テレマティクスの分野がますます大事になるのではと考えています。