業務中の社用車による交通事故は、相手方はもちろん、自社にも多大な損害を与えることになります。近頃、その対策として注目されているのが「ドライブレコーダー」ですが、導入前に期待していたほど事故防止につながっていない、という声も多いようです。本記事では、ドライブレコーダーを導入するだけでは思うように事故を減らせない要因と、そこで求められる視点について解説します。
■企業がドライブレコーダーを導入する目的とは?
・「交通事故防止」が導入理由No.1
・約62%が「導入前と変わらない」と回答
■なぜ、自動車事故が思うように減らないのか
・重大事故の背景に「300回のヒヤリ・ハット」が存在する
・求められるのは「視点の切り替え」
■事故を防ぐために有効な対策とは
・対策① 「事故に至らなかった危険運転」を把握する
・対策② 「ドライバーの視点に立った指導法」を実践する
JEITA(電子情報技術産業協会)によると、ドライブレコーダーの国内出荷数は2018年度時点で367万台に達しており、直前の2年間で2.5倍に拡大しています(*1)。この市場拡大の要因としては「悪質な運転による事故の増加」が挙げられており、企業が社用車にドライブレコーダーを導入する目的としても、事故の増加に対する対応策が多く挙げられているようです。
*1 https://www.jiji.com/jc/article?k=2019100700142&g=eco/
この実態は、2018年に行われた次の調査結果でも明らかにされています。
「月刊総務オンライン」会員を中心とする全国の総務担当者を対象に行われた調査(n=274人)では、全体の81%の回答者が「交通事故防止」を導入目的に挙げており、企業の事故防止に対する関心の高さが伺えます。一方で、ドライブレコーダーに対して一定の効果を認める企業は半数以上に及ぶものの(62%の回答者が「運転者の安全意識が高まった」と回答)、「実際に事故が減った」と評価する声は全体の3分の1にも満たないようです。
同調査の「実際に事故は減った?」という設問では、「導入前と変わらない」と回答する企業が62%に達しており、半数以上の企業で導入目的を果たせていないことがわかります。では、「導入前と変わらない」と回答する企業と、「導入前より事故が減った」と回答する企業では、どのような違いがあるのでしょうか?
この要因として考えられることは、ドライブレコーダーの活用状況の違いです。
同調査の「どんな時に(ドライブレコーダーを)活用している?」という設問では、全体の75%の企業が「事故が発生したときのみ」と回答しています。また、録画した映像を確認する頻度については、全体の約80%の企業が「事故があった時だけ」「不定期」としており、定期的に映像を確認している企業は少数であることが明らかになっています。
この調査結果から、ドライブレコーダーの多くが「事故後の対応」のために扱われており、「事故予防」に活用されていないことがわかります。そして、この状況に至っている企業の多くが1回の重大事故の背後に潜む「数十~数百の危険運転」を見落としていると予想されます。
労働災害の分野で語られることの多い「ハインリッヒの法則」によると、重大事故1件につき、軽微な事故が29件、さらにそれらを引き起こす事故手前の出来事が300回存在すると言われています。これを自動車事故に置き換えると、1件の重大事故の背景には、「約300回の危険運転」が行われていることになります。
つまり、これらの危険運転自体を改善しない限りは、ドライバーは常に重大事故の危険にさらされることになるのです。
かつては、による交通事故の防止策というと、座学の集合研修や実地で行う運転指導といった取り組みが中心でした。しかし、テクノロジーやネットワークインフラが発達した現代、社用車のドライバー一人ひとりが直面する「ヒヤリ・ハット」は、専用のドライブレコーダーが検知し、ドライバーと企業(管理責任者や経営者)によって共有・対策を図ることが可能です。
いま、現実に起きてしまった事故だけでなく、「事故には至らなかったアクシデント(危険運転)」の対策へと視点を切り替えることが求められている、といっても過言ではありません。
最後に、事故を防ぐために有効な対策を整理してご紹介します。
1つ目の対策は、事故に至る手前の「危険運転」を把握するための取り組みです。例えば、パイオニアが提供する業務用の通信型ドライブレコーダー「ビークルアシスト」では、急ブレーキなどの危険挙動を検知すると、同時にその映像データをクラウドにアップロードします。この際、管理者にもメールで通知が届くため、危険挙動があった場所や日時だけでなく、どのような状況だったかまでも即座に把握できるようになります。管理者は安全運転指導に必要な映像だけを確認できるようになるため、いつ・どこで行われた・どんな行為を改善すればよいのか、具体的な改善策を打つことが可能になります。
このような仕組みを活用すれば、「1回の重大事故」につながる無数の原因に対して、未然に改善策を打つことができます。
対策② 「ドライバーの視点に立った指導法」を実践する
2つ目の対策は、「ドライバーの安全意識の向上」につながりやすい形での指導です。例えば、通信型ドライブレコーダーで取得したデータを元に行えば、各ドライバーの運転の癖や傾向を踏まえた指導を行うことができます。パイオニアが提供する「ビークルアシスト」では、指導ポイントを記載したレポートを自動作成できるため、多忙な管理者でも手間をかけることなく運用することが可能となります。
今回ご紹介したように、いかに優れたドライブレコーダーであっても、その運用方法や使い方を工夫しないと思うような成果につながらないことが多々あります。ドライブレコーダーの用途を「事故後の対応」に限定せず、「事故予防」として位置づけることで、危険運転の芽を一つでも多く解消していきましょう。