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罰則対象になりうる「運行管理者の不在」。 押さえるべき法令のポイント

安全な輸送の実現を目的として定められた「貨物自動車運送事業輸送安全規則」。この法律によると、原則として事業用自動車の運行を管理する全ての事業所に「運行管理者の選任」が義務付けられています。しかし、人手不足が深刻化しながらも需要は拡大し続ける物流業界において、規則順守がおろそかになるケースも起きているようです。法律で義務付けられているからこそ「いまは時間も資金もないから…」といった言い訳は通用しません。何が処分に該当し、どのような体制が求められるか、あらためて理解を深めるようにしましょう。

【目次】

■運行管理者の不在が起こるケースとは
■運行管理者不在に伴う処分
■運行管理者を選任するための方法
■2年に1回受講しなければならない「運行管理者講習」
■現場のリスクを最小化する「管理体制の仕組化」とは

運行管理者の不在が起こるケースとは

国家試験の取得が求められることから対応が先延ばしになり、運行管理者不在(未選任)のまま事業を続けるケース。例えば、運行管理者が退職する場合、後任の運行管理者を決めなければならないにも関わらず、候補者が運行管理者試験に合格できず、国土交通大臣が定める職務(運行管理者等講習の専任講師)に従事することもできずに時が経ってしまった、ということが起きてしまいます。

また、運行管理者が選任されていながら、体調不良や通院等で欠勤が続く場合にはどのようにすればよいのでしょうか。企業の規模にもよりますが、「複数名の運行管理者の選任」や「運行管理補助者(以下、補助者)の選任」を行い、ギリギリの人数で管理することは避けるような体制が望ましいです。

前者の場合には、運行管理者とは別途「統括運行管理者」を選任し、その届出をする必要があります。一方で、後者は「補助者(運輸局への届け出は不要。しかし、運行管理者資格証を取得しているか、基礎講習を受講していることが必要)」を選任する方法です。ただし、補助者が実施できるのは、乗務前後に行われる点呼の一部(3分の2まで。運行管理者は少なくとも3分の1を実施しなければならない)と、運行指示書に関わる資料作成、運転者への伝達行為とされています。各要件を正確に把握した上で、適切な方法を検討しましょう。

>>運行管理者・補助者の資格要件の詳細については、国土交通省のHPをご覧ください。

「虚偽の届け出」はもちろんのこと、「選任(解任)の未届け」も違反にあたるため、管理の不手際が招くリスクはあまりにも大きいといえるでしょう。
では、仮に運行管理者が不在のまま事業を継続してしまうと、どのような処分があるのでしょうか。

運行管理者不在に伴う処分

運行管理者不在(未選任)は行政処分が下される中でも「悪質な法令違反」に該当し、30日間の事業停止(車両の使用停止)につながりかねません。この処分が下されると、各地域の運輸局によって社名が公表されるため、社会的な信頼失墜につながる可能性も高いといえます。

そして、事業停止処分を受けたにも関わらず、「違法認定した行為が改善されない」として違反点数が重ねられると、最悪の場合、事業許可の取消処分を受ける恐れもあるのです。こうした点を踏まえると、違法な労働環境や運行状況を改善できないことは、大きな経営リスクといえるでしょう。

運行管理者を選任するための方法

運行管理者として選任する従業員は、「運行管理者資格者証」の交付を受けていることが必要です。そして、運行管理者資格者証の交付を受けるためには、次の2つの方法があります。

試験による方法

1つは、資格者証の交付を受けようとする事業と同じ種類(旅客、もしくは貨物)の運行管理者試験に合格する方法です。受験資格として、次のいずれかの要件を満たしていることが必要となります。*1
①運行管理に関して1年以上の実務経験を有する。
②基礎講習を修了している。

実務経験などによる方法

もう1つは、国によって定められた一定の実務の経験等を満たす方法です。(一般貸切旅客自動車運送事業を除きます)*1

こうした選任までのステップに加えて、運行管理者資格取得後に欠かせないのが「運行管理者講習の受講」です。

参考:運行管理者になるには?試験の内容や合格率を徹底解説! |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

2年に1回受講しなければならない「運行管理者講習」

事業者は選任した運行管理者について、運行管理者講習を2年に1回受講させなければいけません。そして、この講習には次の種類があります。*2

・基礎講習:運行管理者及び補助者になろうとする方が受ける講習(16時間)
・一般講習:運行管理者が受ける講習(5時間)
・特別講習:事故を惹起した運行管理者が受ける講習(13時間)

こうした講習の未受講が発覚した場合にも行政処分が下される恐れがあります。車検の管理などと同じように、適切な管理を行うようにしましょう。

事業の継続性を確かなものにするためにも、運行管理者の配置と講習の確実な受講は必須といえます。だからこそ、新たな人材確保が困難な今の時代、選任されていた運行管理者が突然不在になることは極めて大きなリスクなのです。そこでもうひとつ、体制として整えたいのがITやクラウドの活用です。

現場のリスクを最小化する「管理体制の仕組化」とは

運行管理者を選任するまでの過程を見てもわかるように、法令を遵守するためには「運行管理体制の整備」が欠かせません。資格を必要とする専門職は、業務が属人化してしまうという側面もあるため、新任運行管理者が選任できても即戦力として業務を行えるかという課題もでてきます。特に、人手と時間でカバーするアナログ運用をしている場合は、その知識や経験・勘を特定の人に依存してしまい、代わりのいないリスクとしても問題です。

また、2020年4月からは働き方改革関連法(時間外労働の罰則付き上限規制)が中小企業にも適用されるようになったこともあり、「業務プロセスの見直し・改善」に取り組む企業が増えています。「業務配分の見直し」や「適正な人員配置による一人当たりの業務量の削減」といった、抜本的な改革のためにITツールの活用が注目されています。

そこでパイオニアが提供する「ビークルアシスト」は、車両に関わる業務の管理にかかる”手間を削減”し、属人化している業務の“平準化”をクラウドならではのサービスで実現します。
通信型ドライブレコーダーやカーナビといった車載端末が活動状況を見える化。「日報・月報」や「車両稼働率」「走行状況」といったレポートの自動作成から事故防止に向けた安全運転管理までサポートします。

運行管理体制や安全運転指導の見直しをお考えの企業様は、お気軽にお問い合わせください。

関連記事:もし社用車で事故が起きたら |ビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

<出典>

*1  運行管理者とは|公益財団法人 運行管理者試験センター

*2 運行管理者講習の種類 | 国土交通省HP