企業が所有する車がどの程度使われているのかを把握するために、車両稼働率を計算する方法があります。車両稼働率を分析すれば、社有車に関わる無駄を削減し、コストの削減や効率化を実現できます。 本記事では稼働率の考え方や具体的な数値の求め方、稼働率をアップさせる方法について紹介します。
1.稼働率とは? 計算すればコストや生産性の無駄を把握できる!
9.まとめ:車の稼働率を計算して分析結果を現場にフィードバックしよう
稼働率とは、人や設備がどの程度動いたのかを計測する指標のことです。
稼働率計算はあらゆる分野や業務で活用されています。例えば生産部門や工場では、工場の生産能力に対し実際にどのくらいの製品を生産できたのかを数値で把握するために稼働率の計算を行います。またIT業界では、従業員1人の一カ月あたりの基準労働時間に対する実労働時間が稼働率となります。これに1日あたりのタスク消化率を照らし合わせると、業務がどれだけ効率良く行われているかを数値として把握できるようになります。
企業が所有する車の管理のために、稼働率をチェックするのもおすすめの方法です。例えば物流業界や配送業では、荷物を運ぶトラックや運送のための貨物車両などを使って業務を行います。営業や販促部門の従業員は、車を使った外回りを日常的に行うこともあるでしょう。
社有車の稼働率が高い場合は、社有車の数が足りていない可能性があります。逆に、稼働率が低い場合は車両数を減らしても業務に支障が出ないかもしれません。このように稼働率をもとに必要に応じて増加・削減などの措置を取れば、より効率よく業務をこなすことができ、コスト削減や業務効率アップが実現しやすくなります。
企業が車両を保有していると多額の費用がかかります。またメンテナンスや車検にかかる費用、タイヤ交換の費用、保険料、燃料費、駐車場代、税金などのコストは継続的にかかる支出です。多くの車両を保有すればするほど、車両にかかる費用は膨らんでいきます。
車を手放してしまうと不便な思いをするのではと、車両数の削減に否定的な意見もあると思いますが、あらためて車の稼働率を計算した結果、車両費の無駄が明らかになるケースは少なくありません。社有車に関連する費用を節約するためにも稼働率を詳しく計算し、自社の車が本当に必要かどうかを見極めましょう。
社有車を管理するにあたって稼働率を計算すると、経営面でさまざまなメリットがあります。
稼働率計算の具体的なメリットは以下のとおりです。
車両の維持に費用がかかりすぎている時や、使用頻度の少ない車両がある時には、コストを削減する適切な処置が必要です。しかしどの程度無駄が生じており、どのような対処が必要なのかを具体的に判断するのは難しいものです。
稼働率計算では、車両ごとの使用時間をチェックして分析を行います。稼働率を計算すれば、企業が保有する車の使用状況を詳しく把握できます。
稼働率という明確な数値で分析をし、コストカットなど無駄を省くための適切な行動につなげましょう。
稼働率の計算によって把握できるのは車の使用状況だけではありません。配送や営業のために車を使用する従業員の行動分析ができるのも、稼働率計算のメリットです。例えば車両稼働率が高い営業車があるにもかかわらず営業成績がふるわない場合は、営業ルートに無駄が生じているか、あるいは従業員が休憩などで車内に長く滞在している可能性があるため、社有車の使用方法について改善が必要となります。
一方、配送車の場合は運転そのものが業務の一環ですので、稼働率が高いこと自体はさほど問題にはなりません。ただし、配送ルートに無駄があることが稼働率を引き上げる要因になっている場合は、ルートの見直しなどの対策を講じる必要があります。
このように社有車の実態を把握すれば、日々の業務にロスが生じていないか判断する材料となります。必要に応じて措置をとれば、業務の効率化が実現する可能性も高まるでしょう。
社有車の稼働率が全体的に低いことが判明した場合、業務量に対して社有車の数が多すぎる、あるいは車両そのものが必要ないといった問題があることが想定されます。 車両の購入には数百万円という費用がかかります。さらに維持費には年間30~50万円の費用が必要となるため、利用しない車両を手放すことで大きなコスト削減につなげられます。車両を使用する業務の担当人員を減らす、リーズナブルに利用できるカーシェアリングを活用するなどの方法で節約するのもいいでしょう。 具体的な数値をもとに車両台数削減などの対処ができるのも、稼働率計算を行うメリットです。
業務の効率化や顧客満足度の向上を目指せるのも、稼働率計算や分析のメリットです。稼働率の分析を行った結果をもとに配送ルートを見直し、業務が短時間で終わるようになった場合、従業員は別の業務に取り掛かることができます。配送業であればより多くの荷物を運べるようになり、一人当たりの生産性をあげることにつながるでしょう。 また、時間に余裕が生まれれば従業員もいつもより丁寧な接客態度を心がけられるようになります。急な集荷や配送依頼が来ても、全体的なスケジュールにゆとりがあれば、対応できる従業員を割り当てることができ、顧客の満足度をあげやすくなります。
社有車の稼働率(%)は、社有車の実働時間÷営業時間×100という式で求められます。
社有車は、稼働率を計算する際に営業時間を軸にするのが一般的です。例えば営業時間が8時間で、社有車を業務中に1時間使用した場合で計算してみましょう。この時の稼働率は、1h÷8h×100(社有車の使用時間÷営業時間×100)という計算で求められます。つまり、稼働率は12.5%です。
8時間の勤務中に30分のみ車両を使用した場合であれば、0.5h÷8h×100の計算式で、稼働率は6.25%となります。
商品を運ぶ配送や物流の業界では、稼働率がそのまま業務の成果を示す指標になるでしょう。配送車の場合も社有車と同じで、配送車の実働時間÷営業時間×100で稼働率を計算します。
車両の稼働率は社有車を使うたびに計算し、記録しておきましょう。ただ、手動で毎回計算するのは手間がかかるので、運送管理システムなどを使って自動計算できるようにしておくのがおすすめです。社有車を使った従業員が日付や走行距離などを記録する、あるいは事務に申告すればデータを入力するだけで稼働率を自動計算できるようになります。複数台の稼働率を比較したり、台数を減らした場合の稼働率をシミュレーションしたりすれば、車両管理の分析に役立てられます。
車両の稼働率計算では、実際に車両を利用した時間を把握する必要があります。
かつては多くの企業が手書きの運転日報などを使い、車両の利用状況をチェックしていました。しかし、車両の利用時間や行き先、走行距離や運転時間などを毎日手書きで記録していると従業員に大きな負担がかかります。手書きの記録はミスが生じやすいため、正確な分析ができなくなる恐れもあります。
こういった問題を防ぐため、デジタル製品を使って車両管理を行うのが一般的です。
利用実態の把握のために、物流業界ではデジタルタコグラフという機器を使用しています。デジタルタコグラフには走行時間や走行距離など、運送に関わる時間が記録されます。このデータを活用すれば、簡単に車両の稼働率計算を行うことが可能です。
しかしデジタルタコグラフは10~20万円ほどの導入コストがかかり、すべての社有車に搭載すると、かえってコストが跳ね上がってしまうかもしれません。コストを抑えて車両管理をするためにも、デジタルタコグラフよりも安価なシステムを選んで導入するのがおすすめです。
車両管理ができるシステムは、シガーソケットやポートに挿入し利用するタイプやドライブレコーダーと併せて利用するタイプ、車載管理アプリなどの種類があります。車両の位置情報や運行状況、運転時間などを自動で計測できるシステムを選び、車内に設置しましょう。
車両管理のシステムが決定し導入が完了したら、データ分析を行います。稼働率や社員の動きを把握するために必要なデータの取り方や手順、方法について見ていきましょう。
まずは、専用の機器やシステムを使って車両の利用状況を確認しましょう。
車両管理システムを使えば、社有車を使った時間や停車時間、走行ルートなどの情報を細かくチェックできます。どのドライバーや担当者が車を使ったのか、営業時間や車を運転する従業員の勤務時間が何時間に及ぶのかといったデータも取得しておきましょう。
続いて、データをもとに車両の稼働率を計算します。単独の稼働率は分析にそれほど役立ちませんが、データを蓄積すれば車の使用状況が可視化できます。
1台の車や1人の従業員の稼働率は、1カ月や1年といった、まとまったスパンで計測しましょう。また、個々の車の稼働状態や拠点ごとの稼働率を計算するのも有効な方法です。
稼働率のデータを取得したら車両の使用状況が適切か、業務効率が下がっていないかといった点を分析していきます。社有車の稼働率は高ければ高いほど良いという訳ではなく、営業成績などと照らし合わせて考えることが大切です。稼働率の高さに営業成績が伴わない場合は、社有車の使い方やルールを見直す必要があるでしょう。このように稼働率の数値をもとにして、さまざまな視点で日々の業務を分析してみてください。
稼働率の目標値を設定し、傾向を把握するというテクニックもあります。理想とする稼働率を目標として設定すれば、稼働率が低い時の対処がしやすくなります。
目標となる理想の稼働率については、後述する「社有車管理における理想的な稼働率を考える時のポイント」で解説します。
分析の内容をもとに車両の稼働目標などと照らし合わせて、車両の運用状況の無駄を見極めましょう。稼働率が低かった時には、使用頻度の少ない車両を手放し、必要に応じてカーシェアの利用などを検討してみてください。
車両を実際に手放した後に現場が不便さを感じたり業務が滞ったりすることがないよう、車両台数の削減によって起こりうるリスクや車を手放したあとの費用面の変化などに関するシミュレーションを事前に行うことが重要です。シミュレーションを十分に重ねておけば、車両を手放すことで起こりうるリスクを最小限に抑えられます。
稼働率の計算時には、社有車の利用実態が適切か、保有台数に無駄がないかなど詳しい分析を行いましょう。
ここからは、運送や物流の業界と営業などの業界に分けて、理想的な車両の稼働率を考える時のポイントを紹介します。
配送や物流の業界では、業務時間の大半で車両を使用します。車両の運行がメイン業務となっている業界であれば、車両の稼働率は70%以上あるのが理想的です。(※)
70%に満たない稼働率が続いている場合、車両の使用に無駄が生じている可能性があります。稼働率が低い状態で推移している時には、稼働率を高める工夫を行いましょう。
とはいえ、車両の稼働率が高ければ効率が良いというわけではありません。無駄な移動が多いために車両の移動距離や使用時間が長引いてしまっているケースもあるため、稼働率だけで車両の必要量を図るのではなく、配送品数や件数などと合わせて分析を行うことが大切です。
また稼働率を計算する時には、企業の売上との相関関係を調べておきましょう。稼働率が高いにもかかわらず収益につながっていない場合には、より効率の良い運送の方法を考えるなどの対処が必要となります。
出典:東京都環境局自動車公害対策部規制課「自動車の使用の合理化について-アドバイス資料-」
営業などの業務では、車両を1日中走らせ続けるということはあまりありません。車を長く走らせることが必ずしも業務の効率化や売上アップにつながるとは限らないからです。
営業をはじめとした職種で、無理に車両の稼働率を高めようとすると、かえって業務効率が下がる恐れもあります。
配送や物流の業界とは異なり、営業職の稼働率は多少低くても業務に影響は少ないと考えられます。とはいえ車両の稼働率が極端に低い場合には、車両の使用方法を考え直したほうが良いでしょう。
車両の稼働率の分析を通して、車両の稼働の無駄や車両維持費の高さが明らかになることは多いです。車両の稼働率を把握したら、さらに高い稼働率を実現するための方法について考えていきましょう。
車両の利用率や運転担当者の運転時間、稼働率などのデータを即座に反映し分析できるシステムがあれば、データをレポートやダッシュボードで確認し、一目で個別の状況を把握することが可能です。
具体的な数値をチェックしながら、稼働率向上やコストの削減に関する施策を打ち出すことができます。
配送ルートの適正化や営業ルートおよび社有車の使い方の見直しも、稼働率向上につながる有効策となります。
例えば配送のルート選択に無駄がある時は、より効率のいいルートを提案できるシステムがあれば便利です。営業をより効率化するためには、成果の高い従業員の営業ルートを分析して他の社員にも周知するといいでしょう。
車両の利用状況を適正化すれば、燃料費や維持費の節約、残業時間の短縮などのコスト削減も実現できます。稼働率向上だけでなく、ドライバーや営業担当者の負担を軽減することにもつながるでしょう。
稼働率は高ければ高いほど良いという考え方もあります。しかし、稼働率が高すぎる時には、現場に過剰な負荷がかかっている可能性が考えられるので注意しましょう。
稼働率は企業の繁忙期には高くなり、閑散期には低くなる傾向にあります。繁忙期に一時的に稼働率が高くなったのであれば特に問題はありません。しかし、普段から稼働率が高すぎる水準を示している時には、業務の量が増えすぎていないか、従業員の運転時間が長時間に及んでいないかといった点をチェックしましょう。場合によっては、現場の環境を改善することも必要です。
高すぎる稼働率に対し適切な対処をしなかった場合、従業員の退職のリスクや業務量過多による危険運転のリスクが高まる恐れがあります。また、現場のモチベーション低下にもつながりやすいので気をつけましょう。
日常的に車を使う企業では、車両稼働率の計算をして車の利用実態を把握することが重要です。稼働率を正しく計算すれば、車両の維持管理に無駄な費用がかかっていないか、現場に過度な負担がかかっていないかをチェックできます。
車の稼働率を把握するためにも、車載の管理システムや管理アプリを上手に活用しましょう。車両の走行状況を逐一共有できるシステムがあれば、スムーズに稼働率分析を行えます。分析内容を現場にフィードバックすれば、現場の負担減や効率向上、コスト削減に繋げていくことが可能です。
パイオニア株式会社のビークルアシストを活用すれば、高精度な走行ログデータをもとに、日報や月報を自動的に作成できるため、稼働率の計算を楽に行えます。また走行履歴レポートを閲覧すれば、車の使い方や営業ルートに問題がないかどうかチェックすることも可能です。
稼働率計算を通して業務効率化を実現するためにも、ぜひビークルアシストをご活用ください。