2022年4月から義務化された運転業務前後のアルコールチェック。飲酒運転を防止するためには、必要な施策といえるでしょう。一方で、気になるのが「アルコールを摂取してからどれくらい時間が経てば運転していいのか」ということです。目安などはあるのでしょうか。 そこで今回の記事では、アルコール摂取後の運転までの目安となる時間と計算方法について紹介します。併せて、飲酒運転をしてしまった場合の罰則についても解説します。
警察庁は2023年6月8日、「白ナンバー」の車を使う事業者に対するアルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を12月1日から義務化するとの方針を明らかにしました。それに関連し、2023年6月9日から同年7月8日までパブリックコメントを募集しています。 (この経緯について、詳しくは【2023年6月最新情報】アルコール検知器を用いた酒気帯び確認の義務化は2023年12月か。パブリックコメントの募集が開始されるもご参照ください) |
2.アルコール摂取後、何時間後に運転できるのかを計算する方法
アルコールを分解する時間は個体差があるため「何時間経過すれば運転してもいい」とは、一概にはいえません。なぜなら、人それぞれの体質や体調の違いはもちろん、体重の差や飲んだお酒の量、アルコールの度数も関係するためです。
1時間で分解できるアルコール量の一般的な目安としては、体重60kg〜70kgの人の場合で約5gと考えられています。アルコール5gとは、日本酒約4分の1杯、ビール中瓶約4分の1本、ウイスキーのダブル約4分の1杯となります。つまり、日本酒1合、ビール中瓶1本、ダブルのウイスキー1杯を分解するために必要な時間は、約4時間だということがわかります。
まずは最低でも上記を目安とし、運転する時間から逆算して、余裕を持って分解できるだけの時間を確保するようにしましょう。
ただし、注意しなければいけないのは、睡眠中はアルコールの分解が遅くなることです。そのため「睡眠時間があるから大丈夫」と考えるのではなく、睡眠時間プラスアルファの時間をとるようにする、そもそもの飲酒量をセーブする、など注意しなければいけません。
白ナンバー事業者のアルコールチェック義務化について一からご理解されたい方は、『アルコールチェックの義務化にむけて準備しておくポイント』をご参照ください。
先ほど、分解に要する時間は個人によって異なることを伝えました。実は、人が1時間で分解できるアルコール量の目安は体重をもとに算出することが可能です。ただし、この計算式には体質など数値に表せないことは反映していないため、あくまでも目安に過ぎないことを予め認識しておきましょう。
1時間で分解できる量の目安を求める計算式は以下の通りです。
「体重×0.1」
この簡単な計算式で、分解できるアルコール量(/時)がわかります。数字を当てはめるとわかりやすいですが、体重70kgの人ならば1時間で分解できるアルコール量は7g、80kgなら8g、ということになります。この計算式からいえば、飲んだアルコールの量が同等だとすると、体重が重い人(=血液が多い人)ほど血中アルコール濃度は低くなるともいえるわけです。
そして、1時間で分解できるアルコール量がわかれば、摂取したアルコールの分解にかかる時間の目安を算出することも可能となります。その数値を求める計算式は以下のとおりです。
「純アルコール量 / 分解できるアルコール量(/時)」
具体的な数字を当てはめて計算してみましょう。たとえば体重80kgの人が、純アルコール量24gのお酒を摂取したとします。計算すると、分解には3時間かかる、ということになります。24g(=純アルコール量)割る8g(分解できるアルコール量/時)で、3時間ということですね。
しかし、何度も言いますが、紹介した計算式で算出される数値はあくまで目安に過ぎません。あくまでも、飲み過ぎない、無理をしない、ということを基本姿勢とするようにしましょう。運転を翌日などに控えているのであれば、なおさらです。
アルコールの抜ける、分解される時間を計算するサービスがあるので自分の好きなお酒をどれだけ飲むと、分解されるのにどれだけの時間がかかるか把握しておきましょう。
参考:単位・ドリンク換算 分解時間のめやす電卓(ver.1.1)
運転する当日に飲酒してはいけないことは言うまでもありませんが、前日のお酒にも注意を払うようにしてください。なぜなら、前日に飲んだ分が体内に残っていた場合も、アルコールチェック時に検出されてしまうからです。基本的には、翌日に運転を控えているのであれば飲酒しないでおくことが最も安全です。
どうしても飲む機会がある場合は、飲酒量を少なくする、飲酒時間を短くする、睡眠時間を確実に確保する、ということを徹底するようにしましょう。自分としてはお酒が抜けているつもりでも、微量なアルコールが残っていれば検知器に引っかかる可能性があります。
運転前にアルコールが検出されると、当然ながらドライバーは仕事ができません。影響はそれだけではなく、他のドライバーへしわ寄せがいくことも考えられます。また、仮に他のドライバーがいない場合、最悪運行できないケースも発生するでしょう。そうなると雇用側の企業責任が問われてしまいます。少しでもリスクを抑えるためにも、前日の飲酒にも注意をする必要があるのです。
前日に飲酒したとしてもアルコールを抜けば問題ない、と考える方もいるかもしれません。理論的にはそうですが、結論から言ってしまうと、アルコールを早く抜く方法はありません。一般的には「水をたくさん飲むといい」「サウナで汗を出せばアルコールが抜ける」と言われていますが、汗や尿から排泄されるアルコールの量はたかが知れています。
もちろん、アルコールには脱水作用があるため「水を飲むこと」自体は推奨される行為ですが、摂取したアルコールのほとんどは、肝臓で分解されているのです。つまり、水を飲む、サウナで汗をかく、といったやり方をしても、血中のアルコール濃度はほとんど変わりません。そもそもアルコールが入った状態でサウナへいくことは危険な行為なので控えるようにしましょう。
アルコールを早く抜く方法は残念ながらありません。最も効果的なのは、やはりアルコールの摂取量を控えることであると認識しておきましょう。
飲酒運転を防止するためには、罰則に対して理解しておくこと、意識しておくことも立派な抑止力となります。飲酒運転してしまった場合の具体的な罰則についてみておきましょう。
まず、飲酒運転とひと口にいいますが、実は「酒気帯び運転」と「酒酔い運転」の2種類に分けられ、それぞれ罰則が異なります。また、いずれかに該当する飲酒運転だと判断された場合、運転手だけでなく、同乗者やアルコール提供者、車の提供者にも厳しい処分が下される可能性があります。つまり自分を含めて多くの人の人生を狂わせることになりかねません。
飲酒したのなら、絶対に運転はしてはいけません。そして、まわりの人も必ず止めるようにしましょう。
「酒気帯び運転」は、呼気中のアルコール濃度が1リットルあたり0.15mg以上含まれる状態で運転していることを指します。仮に、検出されたアルコール濃度が0.25mg以上含まれていた場合、処分はより重くなります。
運転中の検閲などで、酒気帯び運転と判断された場合、科される罰則は0.15mg以上0.25mg未満で違反点数が13点、最低でも90日間の免許停止処分となります。0.25mg以上のアルコール濃度が検出された場合は、違反点数が25点となり「免許取り消し処分かつ最低2年の欠格期間」という処分が科せられます。
万が一、死傷事故などを起こしてしまった場合は「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金」となります。
「酒酔い運転」は、検出されるアルコール濃度の数値に関係なく、酒に酔った状態で運転が困難だと思われるにもかかわらず運転していることを指します。まっすぐ歩くことができるかなどの運動機能や平衡感覚が正常かどうか、あるいはハッキリと会話できるかなどから判断されるため、アルコール濃度が0.15mg未満でも酒酔い運転に該当することもあります。
酒気帯びよりも重たい罰則となり、酒酔い運転の違反点数は35点、そして「免許取り消し処分かつ最低3年の欠格期間」という処分となります。万が一死傷事故を起こした場合は「5年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が科せられます。
悲惨な死亡事故を引き起こすこともある飲酒運転は、比例して罰則規定も厳しくなっていることがわかりました。また、注意しなければいけないのは、先に述べたように飲酒運転による罰則適用が運転者だけにとどまらない可能性がある点です。対象となるのは、車両提供者、アルコールの提供者、飲酒運転となった車の同乗者です。酒気帯び運転、酒酔い運転、いずれの場合でも当てはまるものであり、危険な運転を止めなかった責任を問われている、とも言えるでしょう。
具体的な罰則について見ていくと、車両提供者については、運転手と同様のペナルティが科せられます。一方で、同乗者とアルコール提供者に関しては、酒気帯びで「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」、酒酔い運転と判断された場合では「3年以下の懲役または50万円以下の罰金」となります。
このように、飲酒運転をしてしまうと、本人はもちろん周りの人の人生にも影響が出てしまうことを理解しておきましょう。
2022年の4月1日から運転前後におけるアルコールチェックが必須となり、10月1日からはチェック時のアルコール検知器の使用と確認記録の保存も義務付けられます。ドライバーを雇用する事業者側は、この義務化を機に、これまで実施していなかった事業所でのアルコールチェックも日常業務のひとつとして組み込む必要があります。日常業務として確実に実施することは、飲酒運転の抑止力となり、リスクを未然に排除できるメリットがあります。
もちろんドライバー自身が自主的に注意することも必要です。同時に、企業として飲酒運転を生じさせない体制づくりが重要といえるでしょう。
最近では多くのメーカーがアルコール検知器を展開していますが、呼気中のアルコール有無や濃度を、音や光もしくは数値で正しく示すことができる機器であれば問題ありません。同様に、保存すべき記録に関しても指定はありません。主には、「検査日時」「検査対象者の氏名」「検査を確認した者の氏名」「検査結果」といった点を最低限残すようにしておきましょう。記録については、手書きベースのアナログ形式でも問題ありませんが、あとからの確認や見直しなどを考えるとデータ形式で保存するスタイルの方がいいでしょう。検知器の中には、検査した結果を自動で記録するものや、専用のシステムと連携できるものもあります。こういったタイプを選んでおくと、管理の手間も省けます。
また、アルコールを摂取していなくても検知器に反応してしまうような飲食物や生活雑貨などもあるため注意しなければいけません。同様に、感染対策の手指消毒用アルコールの取り扱いにも注意が必要です。注意点についても事前に把握し、伝えておくようにしましょう。
何度もいうように、飲酒運転のリスクは運転手本人だけに降りかかるものではありません。まわりの人や企業への影響は大きく、万が一死傷事故などを起こしてしまうと、多くの人の人生を壊してしまいかねません。そのようなリスクを未然に防ぐためにも、安全運転管理者によるアルコールチェックの徹底と仕組み、体制づくりをしっかり行うようにすることが大切です。
関連記事:【安全運転管理者の仕事2023】事例で学ぶ!アルコールチェック義務化の3つの課題と解決策|車両管理ならビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)
アルコール摂取後、何時間後に運転していいのかについては個人差があるため、一概には言えません。しかし、計算式を使えばある程度の目安を割り出せることがわかりました。日常的に運転をする方は、この計算式を頭に入れておくといいでしょう。
とはいえ、確実にそれでアルコールが抜けているかどうかはわかりません。そのため飲酒運転を防ぐためには、飲酒を控えることが最も効果的な方法となります。
ドライバー自身の意識はもちろんですが、雇用する会社側も前日の飲酒を控えるように促すことはもちろん、義務化されたアルコールチェックについても機材をしっかり使って履行するようにしましょう。
悲惨な事故につながりかねない飲酒運転は、多くの人生を巻き込んでしまいます。トラブルやリスクを避けるためにも日常的なアルコールチェックの徹底と意識づけが重要です。