【安全運転管理者の仕事2023】5分でわかる!事故防止に効果的な安全運転指導法

一定台数以上の社有車を保有する場合、法律によって選任が義務付けられている 「安全運転管理者」。安全運転を確実に実施させることや、その教育を行う義務など、事業主が背負う責任を担う重要な役割です。
安全運転管理者は事故防止・事故削減を進める上で重要性が高いものの、「各企業に1名を選任する」 という特性上からか、具体的な取り組み内容が広く知られていないのが現状です。多数の業務を掛け持ちする総務担当者が兼務する場合も多く、業務の負担も大きいと言えるでしょう。
本記事では、安全運転管理者の業務として道路交通法で定められている 『安全運転指導』 をよりよく行うためのコツをご紹介します。

目次

1.データから見る最近の交通事故状況

1-1.近年、業務用車両の重大事故・死亡事故が増えている
1-2.業務車両における事故・違反の例
1-3.安全運転を心がけている「つもり」の、潜在的事故ドライバーが多い

2.安全運転管理者の役割

2-1.安全運転管理者の選任義務
2-2.道路交通法にもとづく安全運転管理者の「8つの義務」

3.安全運転指導の3つのステップ

3-1.事故防止対策は原因に合わせて分けるべき
3-2.【安全運転指導STEP1】過去の事故データの分析

3-3.【安全運転指導STEP2】問題の特定と目標設計
3-4.【安全運転指導STEP3】関係者同士の役割分担
3-5.日々の安全運転指導のポイント

4.まとめ

 

データから見る最近の交通事故状況

近年、業務用車両の重大事故・死亡事故が増えている

交通事故の件数自体は減少傾向にあるものの、重大事故や死亡事故の割合は増加傾向にあります。 また、事故件数に占める業務用車両の割合はここ数年増加してきています。
数十〜数百台規模の車両を保有する法人においては、数年に一度は重大事故・死亡事故に遭遇する確率があるため、日々の業務における安全運転の徹底は重要な課題として認識すべきです。

交通事故件数に占める重傷者数/死者数のグラフです。平成20年と平成30年を比較するとグラフのように増加傾向にあります。交通事故の10件に1件は重大事故、100件に1件は死亡事故となっています。

出典:令和元年版交通安全白書 全文(PDF版) - 内閣府 (cao.go.jp)

 

交通事故件数のうち業務用車両事故の割合のグラフです。平成24年と令和1年を比較すると増加傾向にあり、交通事故に占める業務車両の割合が増加しています。

出典:事業用自動車の交通事故対策事業 | 自動車総合安全情報 (mlit.go.jp)

業務車両における事故・違反の例

実際に起こった業務車両の事故・違反の例をご紹介します。どの例もニュースで報道され、企業名も公開されました。

【東京都】居眠り運転の営業車が3人をはね死傷させた


飲料メーカー社員が営業中に居眠り運転をして 3 人をはね、1 名が死亡、 1 名が重体、 1 名が重傷となった

【千葉県】飲酒運転のトラックが児童5人をはね死傷させた


飲酒運転のトラックが下校中の小学生の列に突っ込み、児童 2 名が死亡、3 名が重傷となった

【栃木県】社有車が横断歩道前で停止中の車を追い抜き


社有車が、歩行者がいる横断歩道を一時停止せずに通過し、映像が SNSで拡散され多くの非難を浴びた

 

交通事故による企業リスクの例

このような事故のみならず、事故には幸い至らなかった危険運転であったとしても、企業にとっては大きなリスクとなります。

①従業員の負傷…従業員が身体的・精神的にダメージを負い就業不能になるリスク

②保険料などの増大…損害賠償に伴う保険料や経費の増大により、多大なコストがかかるリスク

③社会的ブランドの棄損…事故はもちろん、危険運転であっても、企業名とともにSNS 上で拡散され大きな批判を浴びるリスク

特に社員の行動により③社会的ブランドの棄損をしてしまうリスクのことをレピュテーションリスクとも言いますが、SNSでの情報拡散が突如大規模に起こりえる昨今の状況において頭を悩ませている総務のご担当者も多いのではないでしょうか。

安全運転を心がけている「つもり」の、潜在的事故ドライバーが多い

社有車を運転する400 名に調査を実施したところ、常に安全運転を心がけている」と答えたドライバーが82% を占める一方で、運転中にヒヤリハットを感じたことのあるドライバーは88%にものぼりました。
軽微な事故やヒヤリハットは単に運が良かっただけで、一歩間違えば自分や他者の命を脅かす重大な事故になりかねません。 だからこそ、企業では軽微な事故でも撲滅していく必要があります。

 

社員 400 人に聞いた「社有車運転時における不安に関する調査」

 

仕事で運転する際の安全運転意識についてアンケートを取ると、「常に安全運転を心がけている」と答えた人は82%にのぼります。(複数回答可、N=400)

一方、運転中ヒヤリハットを感じた経験があるかどうかについて聞くと、ヒヤリハットを感じた経験があるドライバーは約88%にものぼります。(単一回答、N=400)

社員400人に聞いた「社有車運転時における不安に関する調査」
・調査期間 :2020年8月27日~2020年8月28日
・調査対象 :社有車を持つ企業の社員400 名
・有効回答数:400

安全運転管理者の役割

安全運転管理者の選任義務

道路交通法に基づき、各企業には下記の基準で安全運転管理者の選任が義務付けられています。

安全運転管理者の選任が義務づけられる場合ですが、「乗車定員が11人以上の自動車が1台以上ある」場合は1台ごとに1名選任する必要があります。または、「その他の自動車が5台以上ある」場合は事業所ごとに1名選任する必要があります。
※ 自動二輪車(原動機付自転車を除く)は 1台を0.5台として計算
※ 業務で使用する車両を台数として計算

出典:安全運転管理者(道路交通法施行規則第9条の8)/警視庁HP

安全運転管理者を選任したら、その日から15日以内に管轄の公安委員会(警察署)へ届出書面を提出する必要があります。

選任義務を怠ったり、期限内に届けを出さなかった場合には、 下記のように道路交通法で具体的な罰則が定められているため、注意が必要です。

規定の車両台数を保有しているにもかかわらず、安全運転管理者を選任しない場合、自動車の使用者及び法人に対して50万円以下の罰金など、安全運転管理者を選任・解任した日から15日以内に、公安委員会に届け出ない場合は自動車の使用者及び法人に対して5万円以下の罰金などが科せられます。

道路交通法にもとづく安全運転管理者の「8つの義務」

安全運転管理者には下記の8つの業務が義務付けられています。

安全運転管理者の8つの業務は以下です。①運転者の適性の把握 運転者の適性、知識、技能や運転者が道路交通法等の規定を守っているか把握するための措置をとること。 ②運行計画の作成 運転者の過労運転の防止、その他安全な運転を確保するために自動車の運行計画を作成すること。 ③交代運転者の配置 長距離運転又は夜間運転となる場合、疲労等により安全な運転ができないおそれがあるときは交替するための運転者を配置すること。 ④異常気象時の措置 異常な気象・天災等の理由により、安全な運転の確保に支障が生ずるおそれがあるときは、安全確保に必要な指示や措置を講ずること。 ⑤点呼・日常点検 運転しようとする運転者に対して点呼等を行い、日常点検整備の実施及び飲酒、疲労、病気等により正常な運転ができないおそれの有無を確認し、安全な運転を確保するために必要な指示を与えること。 ⑥運転日誌の備付 運転の状況を把握するため必要な事項を記録する日誌を備え付け、運転を終了した運転者に記録させること。 ⑦安全運転指導 運転者に対し、「交通安全教育指針」に基づく教育のほか、自動車の運転に関する技能・知識その他安全な運転のため必要な事項について指導を行うこと。 ⑧酒気帯び有無の確認・記録保持 運転前後の運転者に対し、当該運転者の状態を目視等で確認することにより、当該運転者の酒気帯びの有無を確認。その内容を記録し、当該記録を1年間保存すること。※2022年4月に追加されました。

出典:内閣府令で定める安全運転管理者の業務(道路交通法施行規則第9条の10)/警視庁HP

これを踏まえ、管理者の義務の一つである事故防止に効果的な「安全運転指導」の方法についてご紹介します

安全運転指導の3つのステップ

事故防止対策は原因に合わせて分けるべき

交通事故の内容を年齢別に詳しく分けてみると、25 歳未満では速度違反や運転操作(スキル)が原因で起こる事故が多く、 55 歳以上では意識が原因のものが多くなっています。

速度違反や操作違反で起こる死亡事故の割合は、25歳未満で33%、55歳以上では15%となっています。25歳未満のドライバーにおいては、高齢層と比較して運転スキルが事故の原因になりやすいことが分かります。一方、漫然運転や確認不足などで起こる死亡事故の割合は、25%未満で32%、55歳以上で45%。55歳以上のドライバーにおいては、若手と比較して運転時のマインドや気のゆるみが事故の原因になりやすいことが分かります。

※ 安全運転義務に含まれる7つの区分:操作不適/前方不注意/動静不注視/安全不確認/安全速度違反/予測不適/その他
出典:警察庁 令和2年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について

同じ部署の社員でも事故を起こす原因はそれぞれ異なるため、 原因に合わせた内容の指導を行うことが重要です。

安全運転指導の3つのステップ

安全運転指導は次の3つのステップで進めると効果的です。

ステップ1 過去の事故データの分析 ステップ2 問題の特定と目標設計 ステップ3 関係者同士の役割分担

【安全運転指導STEP1】過去の事故データの分析

ひとくちに事故と言っても、事故の種類や過失割合など様々な軸で切り分けることができます。 単に件数のみで一律にカウントするのではなく、その構成や割合の推移などを確認し、 自社では何が問題になっているのかを明らかにすることで、 目標設計や実際の指導が意味のあるものになります。

よくない例:すべての事故を一律でカウント
事故には対人事故、対物事故、単独事故などさまざまな種類の事故があるにもかかわらず事故件数を一律でカウントしてしまうと、何を改善すればいいのかわからない
いい例:事故の内訳から自社の課題を探る
自社で発生した事故を過失割合や事故のタイプ(対物、対人、自損など)で分解し、構成比の推移を確認することで、自社で今なにが課題になっているのかがわかる

【安全運転指導STEP2】問題の特定と目標設計

ここまでご紹介したように、事故にも様々な種類がありそれぞれ対策を分ける必要があるため、 単に「事故件数を減らす」という目標にしてしまうと管理者の業務がさらに膨大になってしまい、効果も出にくくなります。 STEP1で行った事故の過去データ分析をもとに自社において優先して取り組むべき課題を特定し、具体的な目標を立てましょう。

悪い例:目標設定があいまい
「事故件数を減らそう!」など、ざっくりとした目標だと、対策が見えづらく何をすればいいのかわからない
いい例:具体的で実行しやすい目標をたてる
どんな事故が多いのかを把握し、「車両単独事故件数において 10%程度の
削減を目指す!」など、具体的な目標を
たてることで実際のアクションにつながる

【安全運転指導STEP3】関係者同士の役割分担

業務用車両を使う社員は1人ではないため、管理者1人で日常の指導を行うことは難しいです。そのため、各部署のマネージャーなどと連携しながら、ドライバーへの指導を行うことが必要になります。それぞれの関係者ごとに役割とゴールを明確に設定し、それを達成できているかという観点で日々振り返りを行いましょう。

悪い例:目標設定後は現場に任せきり
社内で事故件数削減対策の仕組みをつくらずに管理者とドライバーに注意喚起を行うだけになってしまうと、現場の負担が大きくなり運用が続かなくなってしまう
いい例:関係者間で役割分担・情報連携
本社で各支店の目標と指導ポイントを共有し、
各支店の管理者がドライバーへ指導を行って本社と課題共有・見直しを行うなど、関係者の役割分担を明確にすることでそれぞれが自分の目標に責任を持って取り組める

日々の安全運転指導のポイント

ここまででご紹介した安全運転指導の3つのポイントを踏まえ、実際に安全運転指導を行う上ではどのような点を意識すればよいのか、ドライバーの改善アクションを促すために有効な2つのポイントをご紹介します。

①一斉指導よりも日頃の声かけ

新人からベテランまで様々なドライバーがいる中で、各ドライバーに指導内容を理解・納得してもらい、実際の行動につなげてもらうのは簡単なことではありません。
成功のポイントとなるのは「内容を自分ごと化してもらうこと」です。 例えば、その日の運転の前後に「昨日はよく眠れた?体調はどう?忙しいけど、焦らずにね」 「今日はどうだった?」など各ドライバーに合わせて声かけやコミュニケーションを行うことで、 ドライバーは指導を素直に受け入れ、その日の運転に活かすことができます。

データを活用した説得力のある指導

正論や方法論を伝えるだけでは、ドライバーの具体的な意識・行動には繋がりにくいです。
「この道路は車の流れが速いけど、横断歩道も多いからスピードの出し過ぎに注意してね」など、 そのドライバーの実際の走行データや身の回りの事例を見せながら指導を行うことで、 ドライバーは指導内容を自分ごと化して捉えることができ、運転に活かすことができます

まとめ

安全運転指導のやり方は、それぞれの会社の事故の状況や社有車の利用形態などにより、適した実行の仕方が変わってきます。総務担当者が兼任することも多い安全運転管理者の業務はかなり負担の大きいものでしょう。
だからこそ、過去のデータの傾向を参考に、課題に優先順位をつけ効率的に・組織的に安全運転指導を継続できる仕組みを作る必要があります。データを見える化し説得力のある安全運転指導をすることができる体制づくりを考えていきましょう。

おすすめ関連記事:【安全運転管理者の仕事2023】5分でわかる!事故防止に効果的な安全運転指導法|車両管理ならビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)