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運送事業者必見!改正貨物事業法の改正で求められる対応策とは

「トラックドライバーの労働条件の改善」などを目的とした「改正貨物自動車運送事業法(以下、貨物事業法)」が、2019年7月1日より一部施行されました。本改正は、2024年4月から始まる時間外労働の限定時間の設定を見据えたものといわれています。この改正を受けて、運送事業者にはどのような対応が求められるのでしょうか?今回は、改正のポイントと求められるアクションについてご紹介します。

【目次】

■改正貨物事業法では何が変わるのか?
■法改正によって安全確保と業界の健全化を図る
■まずは危険運転・走行状況を可視化し、事故リスクを減らす
■通信型ドライブレコーダーを活用した安全運転管理+運行管理

改正貨物事業法では何が変わるのか?

まず初めに、改正貨物事業法の概要についてみていきましょう。主なポイントとして挙げられるのは、次の4点です。

1)規制の適正化
2)事業者が遵守すべき事項の明確化
3)荷主対策の深度化
4)標準的な運賃の告示制度の導入
出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000192.html

これらを一つひとつ読み解くと、運送・物流業界の健全化を目指す法改正の意図が見えてきます。

1)規制の適正化

「規制の適正化」は2019年11月1日から施行された法律で、運送事業者側のルールに視点が置かれています。結果として、法令を順守できていない事業者に対しての取り締まりを行うものとなっています。

①欠格期間の延長等
法改正前、貨物運送事業者が法令に違反して事業許可を取り消された場合、再参入できない期間(欠格期間)は「2年」とされていました。しかし、法改正後には、欠格期間が「5年」となります。この他、「処分逃れをするために自主廃業を行った」とされる事業者や、「密接関係者(親会社等)が許可の取消処分を受けた」とされる事業者の参入制限が設けられました。

②許可の際の基準の明確化
運送事業を新たに始めるためには、管轄する運輸支局に許可申請書を提出する必要があります。
今回の法改正では、許可申請書の審査で求められる以下の要件が明確化されました。

・十分な安全性を確保できるのか(車両の点検・整備の確実な実施など)
・事業を継続するための計画があるか(十分な広さの車庫など)
・事業を継続するための資金があるか

③約款の認可基準の明確化
今回の法改正では、「対価を伴わない役務の発生」を防ぐために、本来の運送業務以外で発生する作業を「見える化」することが求められるようになりました。これは、待機時間、積み込み・取り卸しといった「追加的な附帯業務」についても料金を受け取れるようにするためです。

2)事業者が遵守すべき事項の明確化

「事業者が遵守すべき事項の明確化」は、運送事業者が要すべき適切な計画や能力を定義したものになります。次の2点に関しては事業許可を受けた後も、継続的なルール遵守が求められるようになっています。

①輸送の安全に係る義務の明確化
事業用自動車の定期的な点検や、整備の実施が求められるようになりました。

②事業の適確な遂行のため守るべき義務の新設
車庫の整備や、健康保険などの納付義務が明記されました。

3)荷主対策の深度化

「荷主対策の深度化」は、2019年7月1日に施行済みの内容で、荷主側のルールに視点が置かれています。これはつまり、運送事業者が法令を守って業務に取り組めるように、荷主にも配慮義務が求められていることを意味します。

①荷主の配慮義務の新設
運送事業者が法令遵守できるように、「荷主の配慮義務を設ける」ということが明記されました。

②荷主勧告制度の強化
制度の対象に「貨物軽自動車運送事業者」が追加されたことに加えて、「荷主勧告」を行った場合には、その内容を公表すると明記されました。ここでいう「荷主勧告」とは、荷主が違反行為を繰り返し、改善が見られない場合、関係行政機関によって行われるものです。

③国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設
一定の条件を満たしたときに、国土交通大臣が関係行政機関と協力して「荷主への働きかけ」を行う規定が明記されました。
本条項は、2023年度末までの時限措置とされています。

4)標準的な運賃の告示制度の導入

「標準的な運賃の告示制度の導入」は、国土交通大臣によって「標準的な運賃を定め、告示できる」というものです。
2023年度末までの時限措置ではありますが、荷主への交渉力が弱いケースなどに備えて規定されています。

法改正によって安全確保と業界の健全化を図る

今回の法改正では、荷主への理解・協力を促すことに加え、運送事業者の新規参入に対して一定のハードルが設けられるものになりました。また、既存の運送事業者に対しては働き方改革・法令遵守を求めることで、業界全体の健全化を目指すものとなっています。

前述のように、この背景にあるのは2024年から施行される、「年960時間を上限とした罰則付きの時間外労働規制」です。人々が今と変わらない日常生活を送るうえで、運送事業者の存在は必要不可欠でしょう。だからこそ、今の段階から労務環境の改善に向けた一手が講じられているといえます。

まずは危険運転・走行状況を可視化し、事故リスクを減らす

今回の貨物事業法改正によって、運送事業者にはより細やかな安全運転指導や計画運行、適切な労務管理が求められています。思わぬ事故が重なり、行政処分や事業の取消し・停止を招かないためにも、無事故無違反を目指すことは極めて重要です。

2024年の「働き方関連改革法」の施行まで、残された時間は多くありません。まずは、危険運転と走行状況を可視化し、確実に事故リスクを減らしていくことが大切です。

通信型ドライブレコーダーを活用した安全運転管理+運行管理

安全運転管理や改正貨物事業法で求められる「待機時間を含めた運行管理」を実践するための一手としては、高機能化されたデジタルタコグラフの活用が挙げられます。しかし、これらは決して安価なものではないため、導入が難しい企業も多いはず。そこで検討したいツールが、通信型のドライブレコーダーです。パイオニアの通信型ドライブレコーダーは運行管理サービス「ビークルアシスト」に対応し、高精度な走行ログデータから、訪問先での滞在時間や移動時間を自動で記録することができます。また、通常は手間がかかる日報・月報集計を自動化し、「車両稼働率」「走行状況」といったレポートを自動作成することも可能です。

法改正への対応に向けて、より正確で効率的な運行管理を行いたいとお考えの企業様はぜひご相談ください。

 

●出典
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha04_hh_000192.html
https://www.mlit.go.jp/common/001301280.pdf
https://www.jta.or.jp/rodotaisaku/hatarakikata/kaisei_jigyoho201911.pdf
https://www.mlit.go.jp/common/001301281.pdf