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運転者の適性を把握するためには?具体的な方法について解説

業務中の交通事故は、運転者本人だけでなく事業者にも大きな損害をもたらします。事故を未然に防ぐためには、運転者の適性を把握しておくことが大切です。 運転者の適性を把握しておけば、苦手な部分を重点的に指導する、傾向に合わせてアドバイスするなどの対応ができ、ひいては運転技術の向上、安全意識の高まりにも結びつくでしょう。 この記事では、運転者の運転の適性を把握するための具体的な方法について解説します。

目次

1.運転に慣れているドライバーでも事故を起こしてしまう理由

2.適性診断を行う団体の例:独立行政法人自動車事故対策機構

3.運転適性診断の種類ごとの特徴

3-1.初任診断
3-2.一般診断
3-3.カウンセリング付き一般診断
3-4.特別診断
3-5.適齢診断
3-6.特定診断Ⅰ
3-7.特定診断Ⅱ

4.適性診断を受けなかった場合は罰則がある?

5.運転適性診断の具体的な流れ

5-1.動作が正確であるか
5-2.判断動作のタイミングを測定
5-3.注意配分について
5-4.視覚機能について
5-5.運転態度や危険の感受性について

6.診断の結果を受けて企業の安全運転管理者・運行管理者が考えるべきこととは?

7.まとめ

 

運転に慣れているドライバーでも事故を起こしてしまう理由

交通事故は、必ずしも運転初心者が起こすとは限りません。ベテランのドライバーでも、状況によっては交通事故を起こしてしまいます。これは、毎日ハンドルを握って通り慣れている道を走っていることや、ドライバー歴が長いということを理由に、自分の運転の技術を過信することが一つの要因となっていると考えられます。
また、疲れが溜まっており運転に集中できないことや、強引な割り込みや追い越しが原因になる場合もあります。
安全運転において、ドライバーは常に初心を忘れず、落ち着いた運転を心がけることが重要です。そのためには時間にゆとりを持ち、心身ともに健康な状態であることが大切です。
また、毎日走っている道では油断しやすくなり、スピード超過や一時停止無視などをしてしまいやすくなります。左右の確認やウインカーをしっかり出しているかなど、見落としてしまいやすい部分にとくに注目して運転するようにしましょう

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適性診断を行う団体の例:独立行政法人自動車事故対策機構

独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA・ナスバ)とは、自動車事故防止のための活動と、交通事故の被害者支援を行う機関です。独立行政法人自動車事故対策機構は、タクシーやトラック、バスなどの自動車運送事業者を運転する人などを対象として適正診断を実施しています。
この適正診断は、初めて自動車運送業に従事する人はもちろん、転職先で新たにこのような自動車を運転する場合でも、義務として受講しなければならない適正診断になります。運転技術の有無に関わらず、運転に関する短所や改善点を見つけ出し、事故を未然に防ぐという目的で実施される適正診断です。
独立行政法人自動車事故対策機構は適正診断のほか、定期的な運転講習や安全運転のアドバイス、交通遺児への援護活動なども積極的に行っています。
その他、国土交通省の認可を受けた適性診断を提供する団体は、こちらのリンクより検索することができます。事業用自動車の安全対策:自動車総合安全情報 (mlit.go.jp)

ここからあとは、独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA・ナスバ)の適性診断の内容をベースに詳細をご紹介します

運転適性診断の種類ごとの特徴

運転適正診断にはいくつかの種類があります。この運転適正診断を受講するには事前に予約が必要となるので、忘れずに予約しておきましょう。予約は、電話かインターネットからできます。
主に運転適正診断にはどのような種類があるのでしょうか?ここで、運転適正診断の種類ごとの特徴について解説します。

初任診断

初任診断は、運転事業者に所属している中で、新規で運転者として従事する人を対象とした診断です。この初任診断は状況に応じて受ける時期が異なり、旅客業の場合は事業用の自動車を実際に運転する前に受診しなければなりません。
また貨物業の場合は、貨物に関する運送事業に携わる人が実際にその自動車を運転する前に受診する必要があります。主に、診断結果に基づいた事故を未然に防ぐための注意事項などの指導を受けることとなります。
受診に関して注意したいのは、新規で運送事業に携わる人はもちろん、今まで運転を業務としていた人が別の会社に転職して運転業務を担う場合にも初任診断を受ける必要があるということです。

一般診断

一般診断は、普通運転免許以上の免許を取得している人であれば誰でも受けられる診断です。誰もが受けなければいけない診断ではありませんが、3年に1度程度の間隔での受診が推奨されています。
主に、ドライバーの性格や運転認知能力、視覚などを心理や生理の側面からアドバイスが受けられるので、普段自分が運転していて気づきにくい点を見つけられるかもしれません。また、生活環境が変わった人や、高齢のドライバーに対しても受診を推奨しています。
安全運転を継続させていくには、定期的な適正診断が欠かせません。受診後は、適性診断票を発行してもらえるので、いつでも診断に関する内容を確認できます。

カウンセリング付き一般診断

カウンセリング付き一般診断は、一般診断同様、普通運転免許以上の免許を取得している人であれば誰でも受診できます。また、受診頻度も同様に3年に1度など、定期的な診断が推奨されています。
通常の一般診断に加えて、カウンセラーによるカウンセリングを行い、安全運転のために気をつけるべきことや、事故を未然に防ぐための運転行動について指導を受けられるので、より安全意識の高まりが期待できるでしょう。
一般診断よりも診断時間はかかってしまうものの、久しぶりに受診する人やうっかり受診を忘れていた人は、カウンセリング付き一般診断を受けるという方法もあります。

特別診断

特別診断も普通運転免許以上の免許を取得している人であれば受診できます。受診するタイミングや推奨とされている時期はとくになく、要望に応じて診断が受けられます。
時間をかけてじっくりカウンセリングを行うので、他の診断に比べて精密に診断ができます。

適齢診断

適齢診断は、運転事業者に所属している人で、65歳以上の人を対象とした診断です。この適齢診断は初任診断と同様、旅客業と貨物業とで受診時期が若干異なります。旅客業であれば、65歳になった日から1年以内に受診することや75歳以降で年に一回受診、その後は毎年診断が必要になります。
貨物業は、65歳になった日から1年以内に受診、その後3年毎に1回受診する必要があります。このように、タイミングが複雑ではありますが、加齢による身体能力や判断能力の変化に対する指導や助言を受けることができるので、積極的に受診することをおすすめします。

特定診断Ⅰ

特定診断Ⅰは、死亡事故を起こして、その事故前1年間に事故を起こしていない人や軽傷事故を起こして、その事故前3年間に事故を起こしていない人を対象とした診断です。
受診するタイミングは、事故を引き起こして次に事業用の車両を運転するまでの期間になります。安全に関する指導というよりも、これまでの運転経歴などを参考にして再発防止の指導が受けられるので、個人の運転状況に応じた診断が受けられます。

特定診断Ⅱ

特定診断Ⅱは、死亡事故を起こしてその事故前の1年間にも事故を起こしたことがある人を対象とした診断です。受診するタイミングは、特定診断Ⅰと同様、事故を引き起こして次に事業用の車両を運転するまでの期間になります。
事故の再発防止や運転行動につながる指導を受けられるほか、運転手の根本的な運転特性を分析し、事故の要因を徹底的に診断してくれるので、運転について向き不向きからしっかりと見直すことができます

出典:初任診断/独立行政法人自動車事故対策機構 NASVA(交通事故)
初任運転者への対応について (hta.or.jp)

適性診断を受けなかった場合は罰則がある?

運転事業に従事する人にとって大切な適性診断ですが、もし適性診断を受けなかった場合にペナルティはあるのでしょうか?
適性診断には、受けないことで罰則が発生する診断と、受けなくても問題ない診断があります。
主に、死者や負傷者を出した交通事故を起こした人が受診する特定診断Ⅰや特定診断Ⅱ、運転者を初めて雇用して運転させようとする人が受診する初任診断、高齢者の運転で受診が必要な適齢診断は、受診が必須になります。
もし違反してしまった場合には、貨物自動車運送事業輸送安全規則中の項目等が適用されて改善命令が出されます。
また、適性診断を受診していても、その後罰金では収まらないような重大な事故を起こした場合は、国土交通大臣から認定の取り消しや一定の期間の業務の停止を命じられることがあります。
罰金以上の刑に処せられて執行され、2年が経過していない場合も同様に、国土交通大臣から認定の取り消しや一定期間の業務の停止を命じられます。
重大事故を起こしたことの隠蔽を防ぐために、自動車運送事業者は、新規で採用するドライバーに対して、過去5年間の運転記録証明を提出する決まりになっています。これをもとに、国土交通大臣による処分の内容が決まっていくこととなります。
受診が必須な適性診断以外は、受けないことによるペナルティはありませんが、長期間ドライバーとして従事するのであれば、適性診断を受けることによって、安全に対する考えを改めて意識の向上につなげることができます

参考:運転者適性診断 (mlit.go.jp)

運転適性診断の具体的な流れ

適性診断の項目や内容はいくつかあり、それぞれ操作における注意点やコツなどが違います。では、どのような項目を受けることとなるのでしょうか。ここでは、運転適性診断の具体的な流れについて解説します。

動作が正確であるか

この項目では、1つの事態に対して迅速で適切な判断ができるかを測定します。

判断動作のタイミングを測定

この項目は、動作を起こすタイミングの判断の適切さを測定します。モニターの右から左へ車が通過するので、左端に車が来たタイミングでボタンを押すという診断です。

注意配分について

この項目では、次々に変化する事態に対する注意配分を測定します。

視覚機能について

この項目では、視覚機能について動体視力や眼球運動、周辺視野などを測定します。

運転態度や危険の感受性について

この項目では、ドライバーの運転に対する向き合い方や危険予測について測定します。
CGのシミュレーターによる診断などから選択できます。ふらつきや安全な操作など、実践的な内容になるので、リアルな運転能力を測定できます

参考:運転者適性診断の流れ/独立行政法人自動車事故対策機構 NASVA(交通事故)

診断の結果を受けて企業の安全運転管理者・運行管理者が考えるべきこととは?

安全運転を徹底するためには日頃からドライバーの運転状況や体調を把握し、適切な指導を行う必要があります。これには、企業の安全運転管理や運行管理者の業務がきちんと遂行されることが重要です。
企業の安全管理や運行管理に関わる責任者には、考えるべきことがいくつかあります。企業によって、事業拠点はさまざまです。そのため、その土地柄や地域性から、社内で起こる可能性がある事故やその要因について事前に考えておく必要があります。
また、これまでドライバーが走行してきた道路や運転状況などをもとに、安全対策に関する教育を行わないといけません。こうすることで、同じ事故ケースを減らすことができます。
安全対策に関する教育は、社内の教育体制が整っていなければ行うことができません。まず、社内の教育に関する現状を把握して、改善できるかを判断する必要があります。
しかし、ドライバーが多い企業や走行する道路が複雑な場合は、運行管理が大変になってしままうでしょう。そうした場合には、分析に役立つ車両管理システムの導入をおすすめします。

車両管理システムは、企業内の車両に関する情報を一括管理でき、リアルタイムで運行状況を確認できる便利なシステムです。車両管理システムには様々な機能がありますが、それぞれの企業の課題に適した機能を積極的に導入することで、働き方の改善や生産性の向上を図ることができます。

まとめ

この記事では、運転者の適性を把握するための具体的な方法について解説しました。企業によって、ドライバーの数や走行ルートはさまざまです。 ドライバーが継続的に安全運転を行うために、適性診断や車両管理システムを活用し、ドライバーのスキルを上げていきましょう。
また、ドライバーは年齢層が幅広く、若者から高齢者まで数多く従事しています。年齢によっても、事故が発生しやすい状況や判断能力などに差があるため、それぞれに適した教育方針でドライバーを育成していくことが大切になります。 
大きな事故を未然に防げるよう、適性診断を活用し運転の技術を向上させていきましょう。