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営業車の適切な点検方法と運行管理の活用方法とは

営業車を管理する安全管理者にとって、その管理方法は頭を悩ませる原因となっていないでしょうか。運転・乗車する社員の安全を守るだけでなく、業務効率化にもつながる運行管理ですが「点検では何を、どのようにチェックすればいいのか」「自社で行っている点検方法は適切なのか」と、とくに日常点検において最適な実施方法がわからない人もいるでしょう。 ドライバーに問題がなくても、車に異常があり走行不能であれば業務に支障が出てしまいます。そこで今回は、営業車の適切な点検方法と運行管理の活用方法について、わかりやすく解説します。

目次

1.営業車の点検は適切にできている?日常点検の目的と必要性

2.日常点検の方法と見るべきポイント

3.エンジンルーム内で見るべきポイント

3-1.ウインド・ウォッシャ液
3-2.ブレーキ液
3-3.バッテリー液
3-4.冷却水
3-5.エンジンオイル

4.車両の外から確認するポイント

4-1.タイヤの空気圧
4-2.タイヤの亀裂・損傷・摩耗
4-3.タイヤの溝の深さ
4-4.ランプ類の点灯・点滅・汚れなど

5.運転席で確認するポイント

5-1.ブレーキの利き
5-2.パーキング・ブレーキ・レバー
5-3.ウォッシャー液・ワイパー
5-4.エンジンのかかり具合
5-5.エンジンの低速・加速の状態

6.営業車の適切な点検頻度は?

7.車両管理システムで点検結果を管理しよう

8.その他、車両管理システムでできること

8-1.従業員の安全の確保
8-2.事故のリスク回避
8-3.コストの管理

9.車両管理システムを導入するメリット

10.まとめ

 

営業車の点検は適切にできている?日常点検の目的と必要性

営業車の点検を法律的な観点から見ると、道路運送車両法47条には「使用者の点検及び整備の義務」があり、「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない」と定められています。このことから、営業車の点検は法的に必須であることがわかるでしょう。
また、営業車を適正な状態に保つために「車検」「12ヵ月ごとの定期点検」「日常点検」の、3つの点検が義務付けられています。車検は、行わなければ営業車が公道を走行できなくなるため、確実に受けることとなります。定期点検もまた、整備工場で受けるので問題ないでしょう。

注目したいのは日常点検です。日常点検は社員が自ら行うこととなるため、適切なルールと運用が必要となります。日常点検は車の異常を早期に発見して、整備不良による事故を未然に防ぐ目的で行われます。ブレーキランプが切れていて後続車に追突されるケースは多くありますし、タイヤの空気圧が低くバーストしてしまうケースも少なくありません。
ブレーキの利き具合はとくに重要で、ブレーキペダルの踏み心地を確認しておかないと、運転中に止まろうとしたとき、ブレーキが思ったように効かず衝突事故を起こすこともあり得ます。

こうした事故の中には、日常点検を実施していれば防げたものもあるかもしれません。事故を未然に防ぐためには、車検や定期点検だけでなく、従業員が行う日常点検が重要となるのです。

関連記事:社有車を車検に出す前に知っておくべきポイントとは? |お役立ち情報|クラウド型車両・運行管理サービス ビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

日常点検の方法と見るべきポイント

日常点検では、定期点検のような詳細な点検は行いません。また、自動車整備士などのプロが行う点検でもないので、教習所で学んだ「運転前点検」の内容で充分です。
車両をぐるりと回って外側からの点検、ボンネットを開けてエンジン関係の点検と運転席に座ってのブレーキペダルやサイドブレーキの点検など、短時間で行う点検が日常点検となっています。

日常点検で見るべきポイントとしては、次の個所をしっかり点検します。

・タイヤの状態
・ランプ類の点灯確認
・ブレーキ回り
・燃料装置
・冷却装置
・潤滑装置
・ワイパー
・ミラー

参考:日常点検15項目(私にもできるマイカー点検) | JAF

エンジンルーム内で見るべきポイント

日常点検は、単に外から目視するだけの点検では終わりません。ボンネットを開けてエンジンルーム内を点検する必要もあります。
このときの注意点として、決してエンジンをかけたまま点検しないようにしましょう。日常点検を行ったためにケガをするのは本末転倒ですから、必ずエンジンは停止したままで点検を行います。

ウインド・ウォッシャ液

ウインド・ウォッシャ液は、フロントガラスが汚れた時に汚れを取り除いて、視界を良好にするために必要です。
とくに長距離を走る予定のある営業車では、ウインド・ウォッシャ液が切れていると、フロントガラスが汚れたまま走行することとなるので、事故の危険が高くなります。できれば、満タンにしておくことをおすすめします。

ブレーキ液

ブレーキ・リザーバ・タンク内の液量が、最低量を下回っていないか確認します。この液が少ないとブレーキの利きが悪くなりますから、山間部に出かける営業車ではとくに確認が必要です。下り坂でブレーキの利きが悪いと、ガードレールを突き破って転落するかも知れません。

バッテリー液

バッテリーの液量が、UPPERとLOWERの間にあるか確認します。バッテリーが上ってしまうとレッカー車を呼ぶこととなり、営業車の保険次第では費用が高額になるケースもあります。
とくに冬場にはバッテリーが上がりやすくなっているので、要注意です。

冷却水

ラジエータ・リザーバ・タンク内の冷却水の量が、FULLとLOWの間にあるかを点検します。少ないとエンジンがオーバーヒートを起こして、自走できなくなります。長距離を走る営業車では、LOW付近になっていれば補充しておいた方が無難です。
点検を怠っていて、遠方で自走できなくなったらレッカー車が必要になりますし、なによりエンジンが焼きついて廃車になる恐れもあります。

エンジンオイル

エンジンオイルの点検は、ボンネットを開けてオイルレベルゲージを抜き取り、ペーパータオルなどで拭き取ってオイルの状態をチェックします。オイルに透明感があれば問題ありませんが、濃い茶色・黒っぽくなっているなどの場合にはオイルが劣化しているため、交換が必要となります。
エンジンオイルを拭き取るペーパータオルや雑巾は、営業車内に常備しておくようにすれば、点検時の手間が少なくなるでしょう。

参考:自動車点検整備推進協議会 (tenken-seibi.com)

車両の外から確認するポイント

次に車両の外から確認する、日常点検のポイントについて解説します。ここでは、タイヤの状態とランプ類の点検を行います。

タイヤの空気圧

タイヤの空気圧は見た目で判断する人もいますが、タイヤゲージにて正確に空気圧を測ったほうがより確実です。とくに、営業車は点検を行う人が一定でないことがほとんどですから、個人の感覚ではなく、誰が確認しても結果を把握しやすいようにルールとして決めておくとよいでしょう。
車に詳しければ「大体このくらいのたわみで大丈夫だろう」と判断できるかもしれませんが、会社ではさまざまな人が営業車を運転します。そのため、空気圧計は用意しておくことをおすすめします。
空気圧が低いまま走行を続けると、燃費が悪くなることに加えて走行性能が低下し、タイヤの両肩部が摩耗しやすくなります。昔は「高速道路を走るときは空気圧を高くしておく」という声もありましたが、実際にはそうした必要はありません。メーカーの定める車両指定空気圧に設定しましょう。

タイヤの亀裂・損傷・摩耗

タイヤに著しい亀裂や損傷がないか、全周にわたり点検します。ゴム部に釘が刺さっているケースや、先のとがった石が挟まっているケースもあるので要注意です。気づかずに走行すると、パンクすることもあります。
また、石などは確実に取り除いていないと、走行中に後続車を傷つけることもあります。運転している側は気づくことができませんが「営業車」ということからクレームにつながることもあるため注意しましょう。

タイヤの溝の深さ

タイヤの溝の深さが充分あるかを点検します。タイヤの側面には三角のマークが4~9か所程度あり、タイヤの摩耗が進むとその延長線上に「スリップサイン」が出てきます。
タイヤ一本のなかでも摩耗する範囲は偏ることがあり、部分的に確認して終わりにしてしまうと、スリップサインが出ていても気が付かない恐れもあるため注意しましょう。

ランプ類の点灯・点滅・汚れなど

エンジンのスイッチをONにして、ヘッドランプ・車幅灯・パーキングランプ・ストップランプ・テールランプ・ウィンカーなどの、ランプの点灯具合を点検します。レンズなどの汚れは、充分な明るさとならない原因となるので、キレイに拭き取ります。
日中の点検は1人ではわかりにくいので、2人セットで行った方が効率よく確実です。

参考:https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-inspection/subcategory-tire/faq208

運転席で確認するポイント

日常点検には運転席で点検する場所もあります。ここでは、運転席で点検する5つの項目を解説します。

ブレーキの利き

ブレーキの利きについては、ブレーキペダルを思いっきり踏み込んだときに床板との隙間があるかを点検します。また、踏みごたえがあるか、スカスカしていないかも点検します。基本的に先のブレーキオイルが正常にあれば、スカスカにはならないはずです。

パーキング・ブレーキ・レバー

一般的に、サイドブレーキと呼ばれている部分です。レバー式の場合は思いきり引き上げる際の距離が長すぎないか・少なすぎないかを点検します。ペダル式の場合は、踏みしろで点検します。

ウォッシャー液・ワイパー

ウォッシャー液が、フロントガラスにかかる様子を点検します。
タンク内にウォッシャー液が満タンなのに出てこない・噴出が少ない場合は、ウォッシャー液の噴射口が詰まっている可能性があります。つまようじなどで噴射口を突くと直ることが多いです。ウォッシャー液を出すと、勝手にワイパーが動きます。ウォッシャー液をワイパーでキレイに拭き取れるか、確認して水跡が残るようであれば、ワイパーブレードを交換した方がよいでしょう。

エンジンのかかり具合

いつも通りにエンジンが始動して、スムーズに回転しているかを点検します。営業車のタイプによりますが、タコメーターのある車種であれば回転数が高すぎないか、低すぎないか点検します。
タコメーターのない車種の場合は、エンジン音で点検します。回転数が高すぎる場合は、異音ともいえる大きな音がします。低すぎる場合は、エンジンが止まりそうになるのですぐにわかります。

エンジンの低速・加速の状態

この点検は、走行しながらの点検となります。アイドリング時の回転がスムーズに続くか、アクセルペダルを軽く踏んだ時に、加速がスムーズであるか、ノッキング現象が起きていないかを点検します。この点検は、車内で走行しながらなのでわかりにくい点検となるため営業車を運転していて、いつもと違う状況であれば修理工場で詳しく点検してもらうとよいです。

参考:https://jaf.or.jp/common/kuruma-qa/category-inspection/subcategory-everyday/faq209

営業車の適切な点検頻度は?

営業車における適切な点検頻度については、各企業でバラバラなのが現状です。
まず、車検は当たり前として12ヵ月の定期点検は必要です。あとは、日常点検の頻度になってきますが、これまでは運転前点検として毎日行う必要がありました。トラックやバスでは毎日の運行前点検は必要ですが、そうでない営業車の場合は企業の判断で「適切な時期に行う」ことになっています。
この適切な時期については各企業で判断が異なってきますが、一般的な頻度をいえば「毎月1の付く日」など、10日に1回の頻度が適切といわれています。
点検回数が多い分には問題ないので、基本的には10日に1回の程度で営業車の利用頻度によっては1週間に1回の日常点検を行うなど、稼働状況に合わせて調整しましょう

車両管理システムで点検結果を管理しよう

事業所で行う日常点検では、多くが紙を使って点検をしているはずです。
点検項目が記載されたリストを元に点検を行い、その結果をボールペンで記載します。その後は、管理者に提出し問題がなければ所定のファイルに綴じて保管。この流れが一般的となっています。
ただ、点検はキレイな所ばかりでなく、オイルやタイヤなどの点検時に手が汚れることで、点検用紙も汚れてしまうので、汚れた紙を保管することとなります。エンジンオイルが点検用紙についてしまうと、事務所内がオイルで臭くなってしまいます。
そこで、車両管理システムを利用すれば紙からタブレットなどの電子端末で、点検を行うことが可能となります。車両管理システムと連携したタブレットなどの端末で日常点検を行うと、車両ごとの管理がパソコン上で行えます。
点検の履歴や車検、定期点検のタイミングなどのスケジュール管理もできるので、紙媒体での点検よりも便利で業務効率をアップできます

その他、車両管理システムでできること

事業所による車両管理は、従業員が安全に車両を使用するために必要不可欠なものです。
営業車や社用車をしっかり管理することで、事故防止、コスト管理、労務管理など、社内で車両に関わる色々な業務の効率化を進めることができます。そして、車両管理システムを使えば、多くの業務をより効率化できます。

従業員の安全の確保

企業が保有する車両を従業員が利用する場合は、その車両を使う従業員の安全を確保する義務が生じます。もしも、車両に不具合が起きて事故を引き起こしてしまうと、安全管理に問題がなかったのか調査をしなければなりません。
従業員が利用する車両なので、責任は従業員にあると考える人もいるかもしれませんが、実際には企業側に責任が生じます。
車両を日常的に点検し、しっかり管理しておけば車両に不具合が生じることは少なくなります。車両管理システムを有効活用し、従業員の安全を守りましょう。

事故のリスク回避

では、車両に問題がなくなれば危険はなくなるのかといえば、そうはなりません。今度は、従業員の運転による問題が発生します。急発進やスピードの出し過ぎ、安全でない運転によって、車両事故を起こすと運転していた従業員はもちろんですが、管理する企業側の責任も問われます。
交通違反を犯しての事故となれば、企業の社会的信用が失われ売上にも関わることになります。そうならないためには、車両管理システムにて常に運行車両とドライバーを監視し、安全運転を心がけるようにさせることが重要です。

コストの管理

車両に関わるコストを考えると、購入費またはリース費用、車検費用、定期点検の費用、損耗品の交換費用、修理費用、ガソリン代などが挙げられます。このなかで大きく削減可能な費用は、修理費用とガソリン代です。
安全運転を指導し、危険な運転を減らせば、事故のリスクは低減させることができます。さらに、安定的な運転を意識して行うことで、ガソリン代も節約できるでしょう。
車両管理システムでは、リアルタイムに車両とドライバーを監視できますし、デジタコなどとの連係で急発進や急ブレーキ、速度超過などの運行情報も取得できます。運転のクセや傾向も把握できるので、より個人に合わせた指導も可能となるのが特徴です

車両管理システムを導入するメリット

営業車の日常点検もデジタル化できる車両管理システムですが、導入すればたくさんのメリットがあります。その理由は、営業車や社用車などに関するさまざまな業務管理をラクにしてくれる機能が搭載されているからです。
先にお伝えしているとおり、車両管理システムでは、従業員の安全の確保・事故のリスク回避・コストの管理ができます。これらは、車両と従業員をシステムで監視することで、車両の点検管理・事故防止、ガソリン代などのコスト削減を可能とします。
車両管理システムには車両の管理や監視だけでなく、他の業務システムとの連携ができるメリットがあります。

勤怠管理システムとの連携

営業の中には、会社に寄ることなく直行直帰する従業員もいるはずです。その際には、タイムカードがなく自己申告となってしまうケースもあります。しかし「勤怠管理システムを変更するには費用がかかり過ぎる」といった理由で仕方がないこととしてとらえている会社も多いでしょう。
運行管理システムを導入すれば、車両の運行記録と勤怠管理システムを連携させることで、悩みを解消できます。
面倒な操作は必要なく、運行管理システムから車両の運行開始時間と運行終了時間をCSV形式でダウンロードして、勤怠管理システムに取り込めば完了します。新しい勤怠管理システムを導入しなくても、運行管理システムを導入すれば勤怠もカバーしてくれます。

まとめ

今回は、営業車の適切な点検方法と運行管理の活用方法について、解説しました。営業車の点検については、適切な日常点検の方法と頻度を定め、ルールとして浸透させることが大切です。
また、点検を含めた車両の管理・ドライバーの運転を総合的に管理するなら、運行管理システムが有効になります。運行管理システムとGPS搭載のドライブレコーダーがあれば、リアルタイムで車両とドライバーの状況を把握できます。運行管理システムとドライブレコーダーを連携させることで、車両管理の精度向上を見込めるでしょう。GPS搭載なのでシステムで車両をリアルタイムで監視できます。
GPS搭載のドライブレコーダーについてはドライブレコーダーにGPSは必須?必要性とメリット・おすすめ機種を解説 |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)の記事に目を通してみてください。