車両を保有する企業では、車両を管理する役割が必要になってきます。車両の管理には、車両本体の管理、経理上の管理、運転者の管理が含まれます。管理業務の内容が広くなるため、システム化されていないと膨大な業務内容になってしまう恐れもあります。そこで、今回は車両管理の業務や車両管理を始める上での注意点について詳しく解説します。
2-1.従業員の安全の確保
2-2.事故のリスク回避
2-3.コストの管理
3-1.車両管理を行うメリット
3-2.車両管理を行うデメリット
4-1.安全運転管理者の選任
4-2.車両管理規定の作成と見直し
4-3.管理元、責任者の明確化
6-1.管理業務の効率化
6-2.コスト削減につながる
6-3.事故防止につながる
6-4.サービス向上につながる
車両管理とは企業が保有している車両を管理する業務のことで、管理する項目はさまざまです。車両管理の業務は主に、安全運転管理者が行います。安全運転管理者は運送業などの業種に限らず、一定台数以上の車両を保有している企業は選任しなくてはなりません。安全運転管理者には、車両管理表の記入や運転者の管理などの業務があります。
ここでは、車両管理にて管理すべき項目を、カテゴリごとにまとめました。基本的には、車両本体の情報や車検、修理や保険など、車両に関する履歴をまとめて残しておくことが重要と考えればよいでしょう。
車両本体:登録番号、車名、初度年登録年月、車検日、メーカー、型式、車台番号、車格
購入・廃車:仕入先、購入・契約年月日、仕入れ区分、廃車・解約年月日、購入・リース金額
車検・整備:車検の有効期限、定期点検記録、整備工場名、整備状況
修理・事故:修理箇所、修理内容、事故発生日、事故内容
使用・管理:使用部署、使用者、運転者、変更履歴、走行距離、使用目的
車両保険:自賠責保険(保険年月日、保険会社、証券番号、保険金額) 、任意保険(契約年月日、契約期間、保険会社、証券番号、代理店名、保険内容)
経費:ガソリン代、タイヤ代、オイル代、修理費、その他車両に係る経費全般
企業が車両管理を徹底して行う最大の目的は、車両による事故防止です。車両に問題を抱えたまま、つまり整備不良のまま使用していれば、重大事故につながる可能性が極めて高くなります。そのような事態が起きてしまうと、企業の社会的信用を失うこととなり、企業の存続そのものに影響しかねません。
たとえ車両に問題がなくとも運転する従業員が安全運転を心がけなければ、人的な要因で重大事故を起こすことも考えられます。交通違反による人身事故などの場合、企業も大きな責任を負うこととなります。車両・運転者などを適正に管理して、事故のリスクを限りなくゼロにするために、企業は車両管理の徹底を行うのです。
車両を適正に管理することで、車両トラブルを防ぐことができます。車両トラブルによる事故は、相手にケガをさせるだけでなく、運転している従業員もケガをするリスクがあります。車両の定期点検は欠かさず受け、日常点検も適切な期間で行うなど、車両が不具合を抱えることなく安全に運行できるように、整備することが重要となってきます。
先にもお伝えしているように、社用車での事故は企業の社会的信用を落としてしまう大きな要因となります。そうならないためには、車両の整備だけでなく車両を運転する従業員が、安全運転を心がける必要があります。事故のリスク回避のために、従業員への安全運転教育といった勉強会も必要です。
また、通信型ドライブレコーダーなどを導入し、会社がいつでも運転状況を確認できる環境を構築するのも、従業員の安全運転につながります。
車両管理の項目には、車両に係る経費全般もあります。日々必要になるガソリン代はコスト管理において重要な項目です。例えば、社用車が20台ある場合、1台あたり月に1,000円のガソリン代を節約できれば、年間240,000円もの経費を削減できる結果につながります。
社有車の私用利用、急発進や急加速、アイドリングしたまま車内で仮眠をとるなどの行動をやめることでガソリン代のコストカットは可能です。そのためにも車両管理にて、全ての車両を厳重に管理する必要があります。
企業が徹底した車両管理を行うには、車両管理におけるメリットとデメリットを把握する必要があります。単に安全運転管理者に対して「車両管理を徹底しろ!」とトップダウンの指示を出しても、デメリットを知らなければ「どうしてこんなことに…」と、他の面で困ってしまいます。
車両管理を行うメリットは、安全確保、事故のリスク回避、コスト管理が可能となることです。徹底した車両管理が初めてであれば、特に高い効果が期待できます。また、日々の車両管理が結果的に社有車での重大事故等を未然に防止し、企業の社会的信用を保つことができるという大きなメリットもあります。
デメリットとしては、日々の細かいチェックが必要になるため、別業務で忙しい担当者のモチベーションが下がってしまう可能性があることです。
車両管理の業務は主に安全運転管理者が行いますが、日常点検や安全運転は各従業員が担当することもあります。細かい指示を出されて「担当の業務でもないのに、なんで」と、不満を持つ従業員も出てきます。数人でも従業員のモチベーションが下がることで、生産効率も下がってしまいます。車両管理は、従業員のモチベーションを保ちつつ企業が一体となって行う必要があるのです。
車両管理業務は幅広く、各車両の走行距離や稼働率の把握、車両の運行状況、ドライバーの勤務時間や体調、運転日報の整理などは随時行う必要があります。 メンテナンス関連では、リース期間の管理、車検や定期点検のスケジュール、事故後の保険対応など、経費関連では、車両の適正な配置、修理代、部品交換の費用、車検代、点検代、ガソリン代など、車両管理にはとても多くの項目があり大変な業務です。
しかし、車両管理を疎かにすると重大な事故を起こす可能性が高くなり、企業の社会的信用を失墜させることにつながってしまいます。企業にとって重要な車両管理を行う上で、重視すべき3つのポイントを次に解説します。
1つ目は、安全運転管理者の選任です。安全運転管理者の選任は「道路交通法」で定められていて、乗車定員11人以上の自動車1台、またはその他の自動車を5台以上所有している事業者は、安全運転管理者を選任しなくてはなりません。
選任する際には誰でもよい訳ではなくて、次の条件を満たす必要があります。
・20歳以上 (副安全運転管理者をおく場合は30歳以上)
・運転管理に関して2年以上の実務経験がある、もしくは公安委員会の認定を受けている
・過去2年以内に公安委員会から解任命令(道路交通法第74条の3)を受けていないこと
・「酒酔い・酒気帯び運転」「飲酒運転にかかわる車両・酒類等の提供・同乗」「麻薬等運転」「ひき逃げ」「過労運転」「放置駐車違反」「積載制限違反」「無免許・無資格運転」「最高速度違反」「自動車使用制限命令違反」といった交通違反をした日から2年以内でないこと
※副安全運転管理者は20歳以上で管理経験1年以上、または運転経験3年以上
安全運転管理者を選任・変更した場合は、15日以内に公安委員会に届け出ないといけません。安全運転管理者の選任には条件があり、誰もができる業務ではないのです。
参考:安全運転管理者等法定講習 警視庁 (tokyo.lg.jp)
2つ目は、車両管理規定の作成と見直しです。車両管理規定とは業務上で車両を使う際のルールを示したものです。社有車で事故を起こせば、当然運転していた従業員はペナルティとして、交通違反の罰則を受けます。 それと同時に企業側は、損害賠償責任を負うこととなります。
もし社有車で駐車違反した場合は企業の責任となるので、従業員の安全運転や交通ルールの遵守は必須となってきます。 そのため、車両管理規定を定めて従業員に日頃から注意喚起を行い、危機管理およびリスク管理をしておかねばなりません。
車両管理規定に定める項目は各企業で異なってきますが、ここでは一般的な項目を参考までに紹介しておきます。
・安全運転管理者の選任について
・車両管理台帳の作成
・運転者台帳の作成
・安全運転の確保
・車両の保守点検及び整備 ・保険の付保
・社有車の私的使用について
・マイカーの業務使用 ・事故時の対応
関連記事:マイカーを業務利用する際に企業が行うべき車両管理とは |お役立ち情報|クラウド型車両・運行管理サービス ビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)
3つ目は、管理元、責任者の明確化です。車両管理を行う際には、管理元と責任者を明確化しておかないと、適切な車両管理を行えません。
一般的に、車両の定期点検、保険、車検などは、総務部や管理部などの部門が行っています。車両の利用は、実際に社用車を割り当てられた各部署で行っているはずです。部署をまたぐことによって、車両管理が一元化されないことになっても不思議ではありません。そうならないためにも、管理元と責任者を明確にしておく必要があるのです。
社有車を管理する最高責任者の指示の下で、総務部や管理部、各部門が車両を管理することが重要です。
車両管理業務は多岐に渡り、非常に面倒で複雑な業務内容となっています。車検や定期点検のスケジュール一つとっても、10台以上の車両を管理するとなると、とても面倒です。
仮にExcelでスケジュール表を作っても、定期的に確認しないと忘れてしまうこともあります。毎日のガソリン代の集計もアナログでは大変です。給油した従業員から給油伝票を受け取り、給油日・給油量・金額・車番をパソコンに入力すると、時間もかかり、入力ミスも起きやすくなります。燃費計算をする場合、車両日報に記載された走行距離を読み取って入力して計算する必要があり、もしも車両日報への走行距離の記載漏れがあると、燃費計算はできません。
このように、アナログにて車両管理を行うには限界があるのも事実です。徹底した車両管理を望むなら、車両管理をデジタル化することをおすすめします。
車両管理をデジタル化すれば、面倒なことでもシステムが簡単に行ってくれます。デジタル化する一番のメリットは、これまで従業員頼みだったことが「見える化」されて、リアルタイムに車両やドライバーの状況を正確に把握できるようになることです。
先のガソリンの集計においても、システムと連動したタブレットやスマホから、運転者が必要事項を入力することで車両日報とガソリン代の集計、燃費の計算をシステムが一瞬で行ってくれます。
車検や定期点検のスケジュールも、予定日が近くなると自動で担当者にメール連絡できるなど、手間の省略や点検忘れを防げるという大きなメリットがあります。徹底した車両管理業務を行うなら、デジタル化してしまうのがおすすめです。
企業が徹底した車両管理を行うなら、デジタル化してしまうことをおすすめしていますが、最も有効なデジタル化は車両管理システムを導入することです。車両管理システムにはさまざまな機能が搭載されていて、車両やドライバーの状況を「見える化」できます。
それによって、ドライバーの体調管理、危険運転への指導、輸送経路の効率化、経費削減などさまざまな業務を効率化できます。
車両管理システムを導入するメリットは、業務管理の効率化にあります。車両管理業務は、車両の日常点検や定期点検、車検などのメンテナンス、ドライバーの健康状態や勤怠管理、不要な超過勤務の防止や適切な休憩指導など多岐に渡っています。
このような業務を担当する安全運転責任者の業務が複雑になるのは当然です。車両管理システムを導入すれば、車両とドライバー両方の情報を一元管理できるので、安全運転責任者の作業が容易になってきます。
また車両管理システムがあれば、ドライバーによる自己申告でなく、正確なデータとして運転状況を把握できるため、集計やチェックの手間が減ります。その結果、車両管理業務全体の効率化が実現します。
この他、システムによっては、運行日誌を自動で作成できる機能も搭載されているので、ドライバー自身の手間も減って、運転に集中できるよい環境をつくることも可能です。
運行に関するコストは、主に管理費・燃料費・人件費の3つです。車両の点検や整備が適正に行われることで、修理コストの削減ができます。距離や時間による燃費計算ができれば、燃費の良い走行をしているか客観的に把握できます。
燃費が向上するエコドライブを心がけるようになり、ガソリン代のコスト削減が実現します。また、非効率な業務が「見える化」されることで残業代などの人件費の削減も実現します。これらは全て、車両管理システムを導入することで叶うことばかりなので、システムを導入すればコスト削減につながります。
車両管理において最も重要なのが、事故防止です。車両管理システムを導入すれば、適切なメンテナンスが行えるので、車両の不具合による事故防止につながります。
また、ドライバーの運転状況も把握できるので、急発進や速度超過など安全運転ができていないドライバーに対して、安全運転の指導を行なえます。車両管理システムを導入することで、車両とドライバー両方を健全な状態に保つことができます。
車両管理システムには、GPSを使ってリアルタイムに車両の位置を把握できる機能が搭載されています。そのため、クライアントに対して現在地を通知したり、到着時間を伝えたりすることが可能となります。
これまでは、ドライバーからの情報をもとにクライアントに知らせていたので、誤差が大きくなることもありました。車両管理システムで把握する情報は精度が高いため、誤差が小さくなり正確な時間を伝えることで、クライアントからの信頼がアップします。
もし、クライアントから荷卸し場所の変更を受けても、リアルタイムにドライバーに通知して、適切なルートを指示できます。急な変更も問題なく受け入れることができるので、クオリティの高いサービスを提供できます。
今回は、車両管理とはどのような業務なのか、始める上での注意点を詳しく解説しました。
車両管理は企業にとって重要な業務ですが、とても面倒で煩雑な内容の業務です。基本的に安全運転管理者の指示の下で行われますが、全ての業務をアナログで行うには限界があります。そこで、車両管理システムを導入して業務をデジタル化するのがおすすめです。
車両管理システムを導入すれば、リアルタイムに車両とドライバーを把握できて、これまでのブラックボックスがなくなり「見える化」することで業務効率がアップします。結果として、管理業務の効率化・コスト削減・事故防止・サービス向上のメリットを獲得できます。
徹底した車両管理を行うなら、車両管理システムの導入は欠かせません。