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マイカーを業務利用する際に企業が行うべき車両管理とは

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、マイカーの業務利用を推進する企業が増えています。 不特定多数が使用する社用車と違い、マイカーを業務利用することで感染予防効果には期待できますが、その反面で個人の所有する車が業務中に事故を起こした際にリスクがともなうのも事実です。 そこで、本記事ではマイカーを業務に利用する際に企業が取るべき車両管理について詳しく解説します。

目次

1.マイカーを業務利用するメリット

1-1.出社することなく目的地へ向かえる
1-2.気軽に運転できる
1-3.密を避けられる

2.マイカーを業務利用する際の企業が行うべき車両管理

2-1.マイカー通勤規程を策定する
2-2.任意保険への加入有無を確認する
2-3.安全運転管理者を選任する
2-4.安全運転指導を実施する
2-5.労務管理を徹底する

3.企業が責任を問われるケースとは

3-1.使用者責任/民法(第715条1項)
3-2.運行供用責任/自動車損害賠償補償法(第3条)

4.マイカー通勤規程を作成する際のポイント

4-1.必要な項目を定める
4-2.基準を決めて許可制にする
4-3.配布して従業員に周知する
4-4.書類を適切に管理する

5.まとめ

 

マイカーを業務利用するメリット

冒頭でも述べた通り、新型コロナウイルスの感染拡大を受けてマイカーの業務利用を許可あるいは推奨する企業が増えてきており、メリットとしては以下のことが挙げられます。

出社することなく目的地へ向かえる

マイカーの業務利用が許可されていない場合、公共交通機関を使用して一度会社に出社し社用車を借りる必要があります。
しかし、マイカーの業務利用が可能になると会社に出社することなく目的地に向かうことが可能です。出社する必要がなくなることで目的地に向かうまでの時間を大幅に短縮でき、業務の効率化にもつながります。

気軽に運転できる

社用車の場合、車種によってシフトレバーやサイドブレーキの位置に違いがあることが原因でストレスを感じる方もいます。
そんな中、普段から乗り慣れているマイカーであれば、運転に慣れていない社用車と違い気軽に運転できます。マイカーなら車の癖もよく理解したうえで運転できるため、安心して走行でき事故の防止にもなるのです。

密を避けられる

マイカーを業務利用することで、電車やバスといった公共交通機関を利用することなく出社することが可能になり、通勤にともなう3密を避けて感染リスクを軽減させられます。
個人だけでなく企業にとってもコロナ過における感染予防対策は必須となっているため、マイカー利用は感染予防の観点では大きな取り組みといえるでしょう。
とくに、持病により感染リスクが高い方にとっては、マイカー利用によって密を避けられる点は大きなメリットとなるはずです

マイカーを業務利用する際の企業が行うべき車両管理

マイカーを業務利用することは、社用車の購入費や駐車場の維持費を軽減させるだけでなく、コロナ過における感染予防対策や業務の効率化など、さまざまな面においてメリットがあります。
しかし、マイカーを業務利用する際には企業側が正しく車両管理する必要があり、安全に配慮し適切に運用することが必須です。
万が一適切な運用ができていない状態で社員がマイカーで事故を起こしてしまった場合、企業にとって大きな損失となる可能性があります。そのようなリスクを避けるためにも、マイカーを業務利用する際は徹底した車両管理が必要不可欠です。

マイカー通勤規程を策定する

企業側がマイカーでの業務利用を許可している場合、マイカー通勤中に起きた事故に対しても企業は損害賠償の責任を問われる可能性があります。
そのため、適切かつ安全にマイカーの業務利用を進めるうえでは、マイカー通勤規定を策定しリスクを回避することが必須です。マイカー通勤規定とは、簡単にいうとマイカー通勤に関する企業ルールのことをいいます。
マイカー通勤規定では、マイカー通勤の許可や有効期間、マイカーによる業務利用範囲、駐車場代やガソリン代の負担額、加入保険の基準、事故発生時の連絡先など、マイカー利用に関するルールとしてさまざまな項目を定めます。

任意保険への加入有無を確認する

マイカーに乗っているときに社員が事故にあった場合、社員個人が加入している保険が適用されることがほとんどです。
そのため、マイカー利用希望者には任意保険の加入の有無を必ずチェックするようにし、もしも任意保険に加入していない場合は加入を義務付けましょう。
また、企業で加入している自動車保険の適用範囲にもマイカーの業務利用を含めるようにし、もしものときに備えておくことが大切です。

安全運転管理者を選任する

業務用として利用するマイカーが事業所に5台以上ある場合は、安全運転管理者を選定する義務が企業にはあります。
安全運転管理者とは、その名のとおり安全に運転するための管理者を指し、業務内容については「道路交通法施行規則」にて7つの項目により定められています。
具体的な業務内容は以下の通りです。

1.運転者の適性等の把握
2.運行計画の作成
3.交替運転者の配置
4.異常気象時等の措置
5.点呼や日常点検による安全確保
6.運転日誌の備え付けと記録
7.安全運転の指導
8.酒気帯び有無の確認・記録保持

いずれも社員が安全に運転できる環境を整備するための内容です。
なお、事業所で管理する自動車数が20台を超える場合は、台数に応じて安全運転管理者のほかに副安全運転管理者も選任する必要があります。
さらに、企業は安全運転管理者を選任後15日以上に事業所の管轄の警察署を経由し、公安委員会へ届け出ることが義務付けられており、安全運転管理者には年に1回講習を受けさせなければいけません。

安全運転指導を実施する

万が一社員が事故を起こしてしまった場合、社員だけでなく企業にも損害賠償の責任を負う可能性があるため、企業にとってイメージダウンにつながることが考えられます。
よって、業務利用中だけでなくマイカーの運転中に起こりえる事故を未然に防止することを目的に、企業は安全運転指導を実施する必要があります。
安全運転指導の例としては、シートベルトの着用や走行中の携帯電話の禁止、飲酒運転の禁止などです。
事故防止への取り組みは、社員の安全を守るうえで必要不可欠。適切な指導を通して安全運転への意識を高めるようにしましょう。

参考:安全運転義務違反に該当するケース!事故時の点数と罰則金について  |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

労務管理を徹底する

マイカーを業務利用する際は、業務にともないマイカーで稼働した時間や休憩時間などを把握して労務を管理するために、運転報告書を作成し実態を詳しく把握することが重要です。
ただし、社員による手書きの報告書では記載ミスや管理に手間がかかるといったデメリットもあります。より徹底した労務管理を目指すうえでは、ドライブレコーダーとテレマティクスサービスを活用した車両管理もおすすめです。
テレマティクスサービスとは車両に対する情報提供サービスのことをいい、ドライブレコーダーが自動録画した映像や記録をリアルタイムかつクラウド上で管理・運用が可能になります。
テレマティクスサービスを活用することで、車両の稼働時間や再度走行開始しはじめた時刻などを詳細に管理でき、手書きの報告書を作成する手間も省けます。
ただし、テレマティクスサービスに対応した通信型のドライブレコーダーを用意する必要があるため、ある程度のコストが必要です

企業が責任を問われるケースとは

車の運転には常に事故のリスクがあるため、マイカーを業務利用する際は事故が起きた際の対応についても考えておく必要があります。
とくに、企業が事故の責任を問われる場合の線引きについては、法律をふまえてあらかじめ理解しておくことが大事です。

関連記事:業務中に人身事故が起きたらどうすればいい?対応法や防止策をご紹介 | 車両管理ならビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

使用者責任/民法(第715条1項)

社員がマイカーで事故を起こした場合、企業が責任を問われるのは民法(第715条1項)の使用者責任に該当するケースです。
使用者責任とは、企業に雇用されている社員が業務中に事故を起こし第三者に与えた損害について、社員のみならず雇用主となる企業も損害賠償の責任を負うというものです。
使用者責任は企業が雇用する社員が起こした不法行為に対し幅広く適用されており、会社に損失がなかったとしても裁判で責任を問われるケースが多くあります。
ただし、社員に対して企業の責任者や安全運転管理者などが相応の注意を行っていたものの不法行為が生じる可能性が極めて高かった場合は、企業に対して損害賠償責任を免除されることがあります。

運行供用責任/自動車損害賠償補償法(第3条)

社員がマイカーで事故を起こした場合、自動車損害賠償補償法(第3条)の運行供用責任に該当するケースでも企業は損害賠償責任を負うことがあります。
自動車損害賠償補償法(第3条)の本文では「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる」とあります。
つまり、運転供用責任においては運行の用に供する者がマイカー利用を許可した企業に該当します。
しかしながら、運転供用責任では業務中によるマイカーの事故は損害賠償責任が生じるものの、マイカー通勤中の事故では業務利用の関係性を見出しにくい点から、企業に損害賠償責任が生じないケースがほとんどです

参考:社員が通勤時、または業務でマイカーを使用する場合の注意点は? | JAF クルマ何でも質問箱
業務中の事故の対応はどうすれば?報告書の書き方を解説 |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

マイカー通勤規程を作成する際のポイント

企業がマイカー通勤を許可する場合、適切な車両管理や社員による事故を防止するためにもマイカー通勤規定の策定と社員への周知は必要不可欠です。
しかし、マイカー通勤規定に定めるべき項目は多く、どこまでをルールにすればよいのか基準がわからないことには上手く作成できません。以下で紹介するポイントを参考し、作成してみてください。

必要な項目を定める

マイカー通勤規定を策定するうえではじめに取り組むべきことは、必要な項目を定めることです。
具体的には、マイカー通勤の許可や業務利用の有無、運転中に守るべきルール、駐車場の有無や駐車場代の負担額、ガソリン代の負担額、マイカー通勤の許可が取り消される場合の条件、マイカー通勤の有効期間、通勤手当などが挙げられます。
また、マイカー通勤にともない加入保険の基準や事故が起きた際の連絡方法も、マイカー通勤規定では重要な項目です。
特に、マイカー通勤中の事故により第三者に怪我を負わせた場合は、企業にも損害賠償責任を問われる可能性があるため、任意保険の加入を必須とし、企業としてマイカー通勤にともなうルールを細かく定めていきます。

基準を決めて許可制にする

上記でも述べた通り、マイカー通勤を許可したうえでの通勤中の事故に対しては、社員のみならず企業も損害賠償責任を負う可能性があります。
そのため、マイカー通勤規定を策定する際はマイカー通勤の希望者だけでなく、全社員に対し一律の基準を設け、許可制として運用することが望ましいです。
なお、社員による事故のリスクを軽減させるためのルールでは、違反記録を提出してもらい、違反回数や内容に応じてマイカー通勤を許可しない基準も設定しておくと安心です。

配布して従業員に周知する

マイカー通勤規定は就業規則の一部となりますが、定める項目が多いため別冊子として社員に配布するかたちで周知徹底するのがのぞましいでしょう。また、マイカー通勤希望者に配布するだけでなく、新入社員の入社に合わせて配布するなど、いつでも社員に周知できるようにしておきましょう。

書類を適切に管理する

マイカー通勤規定を策定し、社員に周知を行った後はルールに沿った運用を行っていきますが、マイカー通勤希望者には別途必要書類を提出してもらい、適切に管理をすることが求められます。
とはいえ、提出書類は法律で定められているわけではないため、あくまでも企業の労務管理の一環として書類を管理することになります。
マイカー通勤の許可にあたっては、免許証のコピーと「マイカー通勤許可申請書兼誓約書(任意書式)」の提出が一般的です。
「マイカー通勤許可申請書兼誓約書(任意書式)」の書式内容は企業独自に定めるものとなりますが、わからない場合は一般的なフォーマットを参考にするとよいでしょう

まとめ

マイカーを業務利用することは、コロナ過における3密を避けて効率的に業務を行えるなど、企業と社員双方にとってメリットが多くあります。しかしその一方で、万が一社員が業務中に事故を起こしてしまった場合は、企業にもその責任が及ぶリスクも付くことは忘れてはいけません。そのため、マイカー通勤やマイカーでの業務利用を許可する際は、適切な管理のもと社員の安全を確保したうえで実施することが大切です。
特に、マイカー通勤規定は企業として必ず策定しておくべきことのひとつであり、正しくルールを設定したうえで管理することが求められます。事業所で業務利用を許可した車両が5台以上となる場合は安全運転管理者を選定する必要があり、マイカー利用には注意しなければならないことも多くあります。
社用車と比べ低コストで管理でき、かつ社員にとってもメリットの多いマイカー利用ですが、正しく運用するには企業としての明確なルールと基準が必要不可欠です。