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大型・中型トラック別で見る事故の原因ランキング

トラックが関わる交通事故は、他の車両や歩行者を巻き込んで重大な事故につながるケースも多いです。そこで今回は、大型・中型トラック別で見る事故の原因ランキングや、事故を減らすためにできることについて紹介します。

目次

1.交通事故の現状

2.大型トラック事故の原因ランキング

2-1.第1位:左折時衝突
2-2.第2位:駐・停車中の追突
2-3.第3位:出会い頭衝突

3.中型トラック事故の原因ランキング

3-1.第1位:出会い頭衝突
3-2.第2位:駐・停車中の追突
3-3.第3位:右折時衝突

4.年齢別に見るトラック事故ランキング

4-1.大型トラック
4-2.中型トラック

5.トラック事故を減らすためにはどうずればよいか

5-1.ドライバーの労働時間を見直す
5-2.安全体質を確立する
5-3.コンプライアンスを徹底する
5-4.ITシステムを導入する
5-5.デジタコやドラレコを導入する

6.まとめ

 

交通事故の現状

まずは2021年1~12月の事業用貨物自動車(軽貨物を除く)が第1当事者となった死亡事故のデータから分かる、死亡・重傷事故の現状です。 

記事内の事故原因などのランキングは、全日本トラック協会のサイトで一般公開されている「2021年1~12月の交通事故統計分析結果(死亡・重傷事故)~発生地別~」に基づいて作成しています。こちらの統計は、交通事故統計のうち事業用貨物自動車(軽貨物を除く)が第1当事者となった死亡事故が対象です。

トラックの重大事故にかかる統計データ | 全日本トラック協会 | Japan Trucking Association (jta.or.jp)

車両別では、大型・中型トラックの事故が9割以上を占めています。時間帯別だと6~18時までの日中の時間帯での事故が全体の7割近くを占めており、中でも10~12時が14.6%と最も大きい割合です。日中は事業用貨物自動車をはじめたくさんの車両が道路を走っているため、事故が起こりやすいと言えるでしょう。 
発生地別に見ると大阪府が131件と最も多く、その次に埼玉県で103件、東京都で65件と続きます。道路区分別では、一般道路の事故が9割近くを占めており、高速道路等よりも大幅に事故の発生件数が多いのが現状です。事故類型別で見ると、車両相互が72.5%と最も多く、その次に人対車両で22.5%、車両単独で5.0%となっています。 
なお、車両相互においては、第二当事者となる車両に自転車等も含んでいます

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大型トラック事故の原因ランキング

大型トラックの事故の場合、事故類型別に見ると車両相互、つまり車両同士の事故が最も多いです。件数は397件で、トラックが第一当事者の死亡事故全体に占める割合は74.5%です。
大型トラック事故において多い車両相互事故は、何が原因で起こっているのかをランキング形式でご紹介します。

第1位:左折時衝突

最も多いのは左折時の衝突で、78件(19.6%)発生しています。右側の運転席からは左サイドの死角が大きくて見にくいため、自転車やバイクなどの巻き込み事故を引き起こしてしまう要因となるのです。
また、直角に左折する際などに大型トラックは右側に大きく膨らんでから曲がる場合もあります。それを見てトラックが右折すると勘違いした自転車やバイクがトラックの左サイドに突っ込んで、事故が起こるケースもあるのです。左折する際は十分に速度を落とし、バックミラーやサイドミラー、アンダーミラー、目視での確認によって安全を確認してから曲がる必要があります。

第2位:駐・停車中の追突

次に多いのは、駐・停車中の追突です。67件(16.9%)ほど発生しています。
例えば渋滞中、低速運転している状態で前方に停車中の車両へ追突、渋滞や右折待ちなどで停車している車両に気付くのが遅れて高速で追突などといったことが挙げられます。
トラックの追突事故では、居眠り運転や脇見運転、周囲の状況を楽観的に都合よく予測して運転する「だろう運転」などによるものが原因として挙げられます。運転に集中することで、防げる事故もあるのです。

第3位:出会い頭衝突

3番目に多いのは出会い頭の衝突で、61件(15.4%)ほど発生しています。
出会い頭の衝突とは、違う方向から進行している車両同士が交わるときに衝突してしまうことです。走行中に進行方向にばかり気を取られていると、左もしくは右から出てくる車両に気付かずに接触してしまうことがあります。
また、相手の車両の存在には気付いているものの、相手がまさか出てこないだろうと誤った判断をして衝突してしまうこともあります。信号機のない交差点などでも起こりやすい事故です

中型トラック事故の原因ランキング

中型トラックの事故原因を事故類型別に見ると、車両相互が最も多いのが現状です。
2021年は347件発生しており、割合は71.5%と大型トラック同様7割以上を占めています。中型トラック事故で多い車両相互事故の原因をランキング形式で見ていきましょう。

第1位:出会い頭衝突

大型トラックの事故原因の第3位にあった出会い頭の衝突が、中型トラックでは1位となっており、70件(20.2%)発生しています。トラックが他の車両と出会い頭に衝突した場合、そのはずみで歩道に乗り上げて歩行者を巻き込んでしまうという痛ましい事故も起こっています。
交通整理の行われていない交差点では左方向から進入する車が優先であること、交差点の一方の道路が明らかに広ければ、広い道路が優先であること、交差点内まで中央線が引かれた道路が優先であることなど、交通ルールをしっかり守り、交差点では注意して運転することが求められます。

第2位:駐・停車中の追突

大型トラックと同様、駐・停車中の追突が第2位となっており、61件(17.6%)発生しています。居眠り運転や脇見運転、「だろう運転」によって追突してしまうケースが多いため、集中して運転することが求められます。
また、トラックは車両自体に重量があり、荷物を載せることで車両総重量はさらに重くなります。これにより慣性の法則が強く働き、トラックを停車させるために必要な制動距離が長くなる傾向にあるため、急停止しにくいと言えます。トラックの制動装置は高性能ではありますが、十分な車間距離の確保が事故の防止に役立つでしょう。

第3位:右折時衝突

3番目に多いのは右折時の衝突で、52件(15.0%)発生しています。右折時衝突の原因の一つに、オーバーハングの膨らみが挙げられます。
前輪より前、および後輪より後ろにはみ出した車両部分をオーバーハングと言いますが、中型トラックなどの長い車両は特に、走行中はオーバーハングに気を付けておかなければ事故につながる恐れがあります。右左折の際にはオーバーハングの分だけ大きく膨らむため、車線からはみ出しやすくなり、対向車や後続車との衝突が起きてしまう可能性が高まるのです

年齢別に見るトラック事故ランキング

次に、トラック事故の発生を運転者の年齢別に見ていきましょう。

大型トラック

大型トラックにおける事故の運転者の年齢は50~54歳が最も多く、101件(18.9%)となっています。以降、45~49歳で100件(18.8%)、55~59歳で83件(15.6%)と続きます。つまり、45~59歳で284件(53.3%)となり、全体の半分以上を占めているのです。
運転免許取得年数別に見てみると、10年以上が472件(88.6%)と最も多くなっています。次に多い10年未満は30件(5.6%)のため、免許取得後10年以上のベテランドライバーによる事故がひときわ多いことがうかがえます。免許を取得したばかりのドライバーよりも、ベテランドライバーの方が経験豊富で余裕のある運転ができるという面もありますが、長年運転してきたことによる慣れで、注意力が不足してしまう可能性があるのです。
初心者ドライバーの場合は、緊張感を持って運転に臨んでいる場合が多いと言えます。ベテランドライバーは、運転に対する意識を一度見直すことで、事故の発生を抑制できるのではないでしょうか。

中型トラック

中型トラックにおける事故の運転者の年齢も50~54歳が最も多く、94件(19.4%)発生しています。続いて45~49歳で61件(12.6%)、55~59歳で57件(11.8%)となっています。45~59歳で212件(43.7%)となり、4割を超えています。
大型トラック同様、運転免許取得年数別にみると10年以上の運転者による事故が最も多く、411件(84.7%)発生しています。続く10年未満の運転者による事故は42件(8.7%)発生しており、10年以上のベテランドライバーが突出して多いのが現状です。
中型トラックにおいても、長年運転していることによる慣れによって、注意力が不足している可能性があると言えるでしょう。例えば慣れた道だからといって緊張感を失って漫然と運転をしてしまう、安全確認を怠るなどが、思わぬ事故を引き起こしてしまう原因になります。
気が緩んで運転中にスマートフォンやカーナビの操作を行う、景色を眺めるなど脇見運転をしてしまうケースも考えられます

トラック事故を減らすためにはどうずればよいか

トラック事故が引き起こされる原因はいろいろです。そんなトラック事故を減らすためには、意識改革やドライバーの労務管理、技術の活用などさまざまな角度から対策を講じる必要があります。具体的にどのような対策が挙げられるのか、詳しく解説します。

ドライバーの労働時間を見直す

長時間の運転は精神的にも肉体的にも負担が大きいです。疲労が蓄積した状態で運転すると、居眠りや注意力の低下などによって事故を引き起こす可能性もあります。しかし運送業界の人手不足やネット通販利用の拡大によって、ドライバーの労働環境はますます厳しいものになっています。
厚生労働省労働基準局によってトラック運転者の労働時間等の改善基準のポイントが示されており、これによると連続運転可能時間は4時間とされています。また、1日の拘束時間は13時間以内を基本とし、延長する際は16時間が限度です。ただし15時間を超える回数は1週間に2回までなど、細かな基準も決められています。こういった基準を守り、ドライバーの労働時間を見直すことで、事故の減少に効果が期待できます。

参考:トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント (mhlw.go.jp)

安全体質を確立する

全日本トラック協会が開催する講習会への参加や、国土交通省が作成したマニュアルの周知徹底などを行うことで、ドライバーや運行管理者の安全への意識を高めます。定期的なドライバーへの教育や指導、訓練を実施することは、初心者ドライバーやベテランドライバーの安全意識向上にも効果的でしょう。
全日本トラック協会による「トラック事業における総合安全プラン2025」では、業界関係者の連携によって安全体質の強化をしていくことが示されています。長時間労働の是正や労働環境の改善への取り組みが求められており、事故防止キャンペーンやトラックドライバーコンテストの実施なども取り組むとしています。
トラック事故を減らすためには、業界全体で安全体質を確立することが求められているのです。

参考:トラックにおける総合安全プラン2025(jta.or.jp)

コンプライアンスを徹底する

道路法、道路運送車両法、道路交通法といった法律や、社会的なルールをしっかり守ることも大切です。トラックの整備不良によって事故が発生することもあるため、トラックの不正改造を禁止することはもちろん、日常点検や定期点検によって車両の安全性を確保することが求められます。また、荷主から運送業者に無理難題を求めることや、理不尽な運行契約、無理な値下げ要求などは運送業者やトラックドライバーにしわ寄せがいくことになりかねません。
その結果、事故を引き起こしてしまうこともあるのです。運送業界だけでなく関係者も含めて、コンプライアンスを徹底することが求められます。

ITシステムを導入する

衝突被害ブレーキ軽減システムや後方視野確認支援装置、車両周辺の安全確認支援装置といった装置の導入や、先進安全自動車の普及拡大など、技術の進展を活かして安全性向上を図ることで、トラック事故の軽減に効果が期待できます。
ITシステムを活用した遠隔点呼の対象拡大や、高精度な点呼システムを普及させることも進められています。ITシステムを活用することで業務の効率化や生産性の向上、安全性の向上に役立ち、トラック事故の軽減効果が期待できるのです。人手不足の解消にも効果を発揮するでしょう。

参考:報道発表資料:遠隔点呼が実施できるようになります!~ICTを活用した運行管理の高度化に向けて~ - 国土交通省 (mlit.go.jp)

デジタコやドラレコを導入する

デジタコ(デジタルタコグラフ)は運転時の走行時間や距離、スピードなどの情報を記録してくれるものです。ドラレコ(ドライブレコーダー)は、運転中の映像や音声などを記録する車載カメラです。時刻や位置情報、スピード、車両の操作なども記録してくれます。
最近は事故発生時の状況証拠としての活用や、あおり運転などによる事故防止の目的からドラレコを自家用車で使う人も増えています。トラックにおいても同様で、デジタコやドラレコの導入は事故の防止に役立てられています。
運行における記録を残して確認できるようにすることで、ドライバーの業務管理や安全運転への意識向上に効果が期待できるとして、導入する企業が増えています

まとめ

大型・中型トラックの事故は、車両同士の事故が最も多いのが現状です。右左折時や出会い頭の衝突、駐・停車中の追突などが事故原因のランキング上位にあります。
年齢別に見ると45~59歳のドライバーが事故を起こしている割合が高くなっています。運転免許取得後10年以上のベテランドライバーによる事故が圧倒的に多いため、運転への慣れや気の緩みから注意力が低下し、事故を起こしているケースも考えられます。
トラックによる事故を減らすためには、ドライバーの労働環境の改善や業界全体における安全意識の向上、コンプライアンスの徹底などさまざまな方面から対策を講じることが必要です。ITシステムやドラレコの活用も事故防止に効果的として、導入企業が増加しています。