2022年4月より道路交通法施行規則の改正がなされ、安全運転管理者の業務として新たにアルコールチェック業務が追加されました。また、2022年10月からはアルコール検知器での確認が必須となり、準備に追われている安全運転管理者の方も多いと思われます。
そのような方々に役立つアルコール検知器の特徴、運用についての情報発信として、車載機器のプロ『株式会社テレコム』と『パイオニア株式会社』の2社共催オンラインセミナーが2022年4月27日(水)に開催されました。株式会社テレコムにて車載器の販売営業やアルコール検知器のウェブセミナーを行い営業活動をしているマーケティング部インサイドセールスの小池さんをお迎えし、アルコール検知器の使い方の実践も交えながらお話を伺いました。
1.車両安全機器のプロが分かりやすく説明!アルコール検知器入門
2.アルコール検知器の特徴を実践とともに解説!実際にアルコールが検知されるとどうなる?
アルコール検知器といっても、様々なタイプがあり強みもそれぞれです。道路交通法施行規則の留意事項として、酒気帯びの有無を音、色、数値などにより確認できることが挙げられています。いったい、どのように選んでいけばいいのでしょうか。
アルコール検知器のセンサーは大きく分けて半導体式・燃料電池式(電気化学式)の二方式があります。半導体式は素早い応答性や価格の安さが魅力的な一方、測定時に呼気中のみならず周辺の環境に影響を受けやすいという特徴も。また燃料電池式は高精度で耐久性に優れていますが、比較的高価であり、半導体式に比べ測定に時間がかかることがあります。
<高機能型アルコール検知器>
東海電子 ALC-ProII
高機能型のアルコール検知器は大量のデータ管理や拡張機能の豊富さが特徴です。測定データは専用の管理用パソコンに蓄積されます。登録人数も無制限のものが多いため、数十名の従業員のアルコール測定データ管理や、複数事業所のデータの一元管理に適しています。
ウェブカメラによる成りすまし防止機能がある他にも血圧計との連携ができるものもあります。アルコールチェックの結果アルコールが検知されると、記録が残りメール通知なども出せるといいます。
<据置型アルコール検知器>
東海電子 ALC-mini IV IC
据置型アルコール検知器は事業所拠点ごとでの管理に向いています。インターネットにはつながっていないため複数事業所での一元管理はできませんが、事前登録した運転免許証を認証させることにより有効期限のうっかり失効を防いだり、顔写真の撮影により成りすまし防止策を打てるものもあります。朝出社し、拠点から社用車を利用する、直行直帰がない場合の運用で扱いやすいものとなっています。
<携帯型アルコール検知器>
タニタ FC-1200
携帯型アルコール検知器は、記録が本体に残り小型で持ち運びの用途に向いています。そのため、事業所に立ち寄らず直行直帰を行う人に一人一台支給、または車ごとに一台置いておくなどの運用が可能です。機種によってはスマートフォンと連動し測定結果と顔写真をリアルタイムで管理者へ自動送信できるものもあります。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、携帯型、特にスマートフォンと連携するアルコール検知器が人気ですが、半導体不足の影響で納期が延びているケースが多くなっています。
アルコール検知器は、会社ごとの事業所形態や、社用車の活用スタイルによって選ぶ必要がありそうです。
ここからは、実際に様々なタイプのアルコール検知器を使い、それぞれの特徴をお伝えします。
まずは据置型(東海電子 ALC-mini IV IC)。小池さんの免許証をかざし本人確認をします。
その後、ハンディユニットに専用マウスピースを差し、息を吹き込む仕様です。
それでは、実際にアルコールを飲んでいた時はどのように反応するでしょうか?その場で、アルコールの代わりとして口臭予防のマウススプレーを使い、疑似的にアルコール濃度が高い状態を作り息を吹き込むと…
「ブー」という音とともに「アルコールが検知されました」というメッセージが出てきます。結果は、その場で内蔵のロール紙から印刷され、エビデンスとして管理しておくこともできます。
アルコール以外にも、直前に食べていた食品に反応してしまうこともあるのだとか。みそ汁など発酵食品などでも反応するケースがあるため、アルコール検知の前にはうがいをしっかりしてから行いましょう。
続いて、携帯型2種のアルコール検知器の紹介です。
まずは、黒色・小型のタニタ製の携帯型アルコール検知器(タニタ EA-100)。息を吹きかけて使う方式です。乾電池式で、それぞれ測定回数の上限が定められています。
次は東海電子製の携帯型アルコール検知器(東海電子 ALC-MobileII)を紹介。
こちらはスマートフォンと連動し、管理ソフトに記録できるのが特徴です。専用のマウスピースを用いて数値を記録します。スマートフォン連動ができない間にも記録を保持します。
アルコール検知器は機器ごとに使用年数や測定回数の上限が定められているため、定期的なメンテナンスが必要です。据置型の場合、機器のセンサーユニットをメーカー交換することで精度を保ちますが、携帯型の場合は測定回数の上限に達すると、管理者がご自身で交換・あるいはメンテナンスに出す必要があります。なお、測定有効期限をすぎた際も同様の対応が必要となります。
道路交通法ではアルコール検知器を「正常に保持する」と明記されています。アルコール測定精度を保持するためにも、測定規定回数や使用年数に達したら交換する、という運用をきちんと行う必要があります。
ここまでアルコール検知器のいくつかの商品を、具体的な使い方を交え紹介してきました。精度の高い燃料電池式、比較的価格が安い半導体形式の検知方式の違いやデータ記録のための外部連携の可否などでそれぞれ特徴があります。
各アルコール検知器の特徴を理解し、業務形態にあったものを選びましょう。
(回答)白ナンバー車の運用ではアルコール検知器の毎週の点検は必須ではありませんが、メーカーの基準に従った日常的な点検をするべきです。
点検に際しては、本日実践したようにマウススプレーを用い、きちんとアルコールが検知されるかをテストする方法もあります。機種によっては、アルコール検知機能がきちんと動作しているか確認できる専用の点検キットがあるものもあります。
(回答)法改正により、安全運転管理者はアルコール検知をする運転者と原則は対面で会話する必要があると明記されています。顔写真記録機能を利用する場合でも、写真を撮っただけでは目視という扱いにならないため、必ず運転者と会話しアルコールの有無を確認する必要があります。同様に、クラウドで顔写真を撮った後でも電話などで確認する必要があります。
アルコールチェックの用途に限らず、業務にあたり数分会話することは、社員の状況を把握しケアすることにつながります。このことも念頭に置き、アルコールチェックの運用を考えるとよいのではないでしょうか。
(回答)出張時に急にレンタカーが必要になった、あるいはスポットでのレンタカー利用など一時的な利用は基本的には対象外です(山口県警察のウェブサイトより)。レンタカーだけでなくカーシェアリング等を利用する場合も類似のケースとみなせると考えられますが、会社で恒常的にそれらを利用している場合は会社管理の運用とみなすべきでしょう。警察庁に確認したところ、もしレンタカー/カーシェアリング等の利用がかなり一時的なものに留まる場合は、安全運転管理者を届け出している所轄の警察署に確認をしてくださいとのことでした。
仮に対象でない場合においても、運転業務前後の基本的なセルフチェックはやるべきだと私たちは考えています。
(回答)業務の運転前後ということですが、アルコールチェックが必要かどうかは、その運転を通勤とみなしているか、業務の一環とみなしているかによります。社有車を使っているということであれば、対象に含めるべきだと考えます。
(回答)社有車に関しては、事業所にて5台以上所有している場合は対象になります。レンタカー、カーシェアリングであっても、社有車として日常的に使っているのであれば対象になります。ポイントは業務遂行目的での使用頻度です。すべてレンタカー利用で業務を行っている会社もありますが、そもそもアルコールチェック義務化の目的は飲酒運転をさせないことであるため、セルフチェック、あるいは義務化と同水準でアルコールチェックを実施すべきだと考えます。
(回答)基本的には、1年分保存する日報の項目として既定の8つ(運転者の名前、車両番号、確認時間、確認方法、アルコール検知器を使用したかどうか、酒気帯びの有無、確認者、その他必要な指示事項)が網羅されているのであれば、運行管理表のみで問題ありません。
(回答)顔写真記録機能は成りすまし防止のためです。ただし、顔写真が記録できる場合でも写真の記録のみでは不十分で対話による確認が必要なため、別途電話などでコミュニケーションをとる必要があります。
(回答)ナンバーがついていて公道を走るものなら対象になります。ナンバーがついていないフォークリフトや構内でのみ利用する場合は対象外です。
(回答)数値の記録について規定はありません。アルコールチェックの結果、濃度が既定の値未満だった場合〇、アルコールが検出された場合×、などの簡易なつけ方でも大丈夫です。
(回答)最適なアルコールチェック業務の運用体制は検査をする人数や事業所形態などにより全く異なってきます。記録の方法についても、すでに運用している運行管理簿があればその継続使用で問題ありません。管理しやすい、継続しやすいものであることが重要です。
アルコールチェック義務化の流れに沿い、各アルコール検知器メーカーが特徴ある製品を販売しています。それぞれの製品に特長があり、どのアルコール検知器が向いているかは各社の事業所の置き方や業務形態、対象の社員の人数などにより変わることがわかりました。日々のアルコールチェック利用シーンや保守点検の運用を見据えて、アルコール検知器を選定しましょう。
パイオニアは、今後も安全運転や車両管理に役立つ情報をウェブセミナーで定期的に発信しています。ご興味のあるウェブセミナーがあればぜひご参加ください。