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【安全運転管理者の仕事2023】事例で学ぶ!アルコールチェック義務化の3つの課題と解決策

飲酒運転による悲惨な事故を防ぐため、2022年度より白ナンバーを所有する企業でもアルコールチェック業務が義務化されました。 しかし状況としては、安全運転管理者の業務負荷が大きくうまく運用できていない、ドライバーとの連携がうまくいっていないなどの理由で、「アルコールチェック業務を継続的に行うのが難しい」 という声も散見されます。 本記事では、義務化後1年を経て見えてきたアルコールチェック業務のよくある課題とその解決策を具体的にご紹介します。

目次

警察庁は2023年6月8日、「白ナンバー」の車を使う事業者に対するアルコール検知器によるドライバーの飲酒検査を12月1日から義務化するとの方針を明らかにしました。それに関連し、2023年6月9日から同年7月8日までパブリックコメントを募集しています。

(この経緯について、詳しくは【2023年6月最新情報】アルコール検知器を用いた酒気帯び確認の義務化は2023年12月か。パブリックコメントの募集が開始されるもご参照ください)

1.2022年4月1日より、白ナンバー事業者でも社有車の運転前後のアルコールチェックが義務化

2.アルコールチェックは安全運転管理者の義務のひとつ

2-1.義務を怠った場合の罰則

3.アルコールチェックの課題と解決策

3-1.アルコールチェックでよくある3つの課題

3-1-1.安全運転管理者の負担増大に関する課題と解決策
3-1-2.確認結果の管理に関する課題と解決策
3-1-3.運転手とのコミュニケーションに関する課題と解決策

4.まと

2022年4月1日より、白ナンバー事業者でも社有車の運転前後のアルコールチェックが義務化

2021年6月 千葉県八街市で、下校中の小学生の列に白ナンバーのトラックが突っ込み、児童2名が死亡、3名が大けがを負う事故が発生しました。運転手からは基準値を超えるアルコールが検出され、運転手に懲役14年の判決が言い渡されるとともに、運転手の勤務先会社並びに同社会長が書類送検されました。
こうした痛ましい事故を二度と繰り返さないため、飲酒運転の撲滅に向けて安全運転管理者の業務として「アルコールチェック」が追加されました。

アルコールチェック業務の内容

運転前後の運転手の状態を目視で確認し酒気帯びの有無を確認。酒気帯びの有無を記録し記録を1年間保存する

※2022年10月に使用予定だったアルコール検知器の使用と常備については、検知器の供給状況を鑑みて無期延期となった(2023年3月30日現在)

出典:安全運転管理者の業務の拡充等|警察庁Webサイト (npa.go.jp)

アルコールチェック業務のポイントについては、こちらの記事をご確認ください。

アルコールチェックの義務化にむけて準備しておくポイント|車両管理ならビークルアシスト|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

アルコールチェックは安全運転管理者の義務のひとつ

道路交通法によって安全運転管理者は8つの業務が義務として定められており、アルコールチェック業務はその義務のうちのひとつです。

義務を怠った場合は、業務違反とみなされ車両運用に支障が出ます。また、ドライバーが飲酒運転を行った場合には事業停止のおそれもあり、厳しい罰則が設けられているため注意が必要です。

義務を怠った場合の罰則

運転者と責任者への罰則

従業員が飲酒運転を行うと、運転者への罰則はもちろん代表者や運行管理責任者といった責任者にも、5年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される場合があります(酒酔い運転の場合)。
さらに、運転者が酒気帯びの状態であることを知りながら社有車の運転を指示した場合、使用者・管理者は管理不足とみなされ、刑事責任を問われることもあります。

一定期間の事業停止(自動車運送事業の場合)

従業員の飲酒運転があった場合、該当日数の行政処分が下されます。

・飲酒運転を下命・容認していた場合:14日間の事業停止
・飲酒運転等+重大事故に係る指導監督義務違反の場合:7日間の事業停止
・飲酒運転等に係る指導監督義務違反の場合:3日間の事業停止
・飲酒運転等があった場合:初違反…100日間の車両使用停止 再違反…300日間の車両使用停止

※白ナンバー事業者において安全運転管理者が酒気帯び確認業務を怠った場合の罰則は設けられていませんが、飲酒運転事故が起こった場合は安全運転管理者の解任命令の可能性があります。(2023年3月30日時点)

車両が使用できなくなる

アルコールチェックを始め、安全運転管理者が義務を果たさず安全運転が確保できていないとみなされた場合、安全運転管理者の解任命令が出される場合があります。これにより安全運転管理者が不在になると、事業継続に必要な台数の車両が運用できなくなります

企業ブランドの損失

従業員が飲酒運転を行なったり、その結果事故を起こしたりすると、メディアやSNSで広く拡散されることがあります。それにより、企業としての社会責任を果たしていないといった印象を持たれ、企業イメージが著しく悪化します。

出典:みんなで守る「飲酒運転を絶対にしない、させない」|警察庁Webサイト (npa.go.jp)
自動車運送事業の監査方針、行政処分基準等の改正について (mlit.go.jp)
安全運転管理者によるアルコールチェックの義務化|岩手県警察公式ホームページ (pref.iwate.jp)

アルコールチェックの課題と解決策

2022年度より白ナンバー事業者での義務化が開始されたアルコールチェック業務ですが、日常の業務やその他の車両管理業務もあるなかで、企業の担当者からはさまざまな課題があがっています。
アルコールチェックに関するよくある課題と具体的な解決策をご紹介します。

アルコールチェックでよくある3つの課題

課題1 安全運転管理者の負担が増大 課題2 確認結果の管理が煩雑 課題3 運転手とのコミュニケーションが難しい

 

安全運転管理者の負担増大に関する課題と解決策

よくあるお悩み

安全運転管理者が1名しかおらずドライバー全員のチェックが大変
・早朝・深夜の運転もあり管理者の業務時間が増えすぎてしまう
・ドライバーが直行直帰する日の確認方法がわからない

解決策

始業・終業時に一斉チェック
「運転前後の酒気帯びの確認」は、個別の運転の前後に限らず、運転を含む業務の前後や出退勤時に行えばよいとされています。そのため、朝礼時や終業前の点呼時に一斉にアルコールチェックを行えば、各ドライバー出発時の立ち会いの手間を省けます。

電話やビデオ通話での遠隔確認
ドライバーが直行直帰の日や安全運転管理者がテレワークの日など、対面での確認が難しい場合はビデオ通話のカメラ越しに顔色や様子を確認する(IT点呼型)電話応答の様子で確認する(電話点呼型)という方法も認められています。

他の人でも対応できるようにする
アルコールチェックは、 副安全運転管理者や安全運転管理補助者(届出不要)が行ってもよいとされています。確認方法や判断基準をマニュアル化し、社員が誰でも対応できるようにしておくことで、安全運転管理者の負担軽減や業務効率化が実現します(IT点呼、電話点呼も同様に誰でも対応可)。

業務自体をアウトソースする

深夜・早朝などの対応が難しい時間帯は、アルコールチェック業務をアウトソースしても問題ありません。確認方法と結果の記録方法をまとめておき、BPOや人材派遣、ヘルプデスクサービスなどを利用して委託することで、社員の負担を大幅に軽減することができます。

参考:神奈川県警察/道路交通法施行規則の一部改正について (pref.kanagawa.jp)
アルコールチェックのアウトソースについては、2022年3月25日の国会で言及があり「業務委託でも問題ない」と回答されています。

 

確認結果の管理に関する課題と解決策

よくあるお悩み

複数拠点の結果を本社で取りまとめるため、確認・結合が手間
・記入がないとき、運転しなかったのか記入漏れなのか判断できない
・記入ミスへの対応が、管理者とドライバー双方の負担となる
・測定時に毎回検査結果を入力すると大幅に時間をとられてしまう

解決策

結果はデータ保存・クラウド管理

測定結果は、データとしてパソコン上で管理するのがおすすめです。紛失リスクがなく、保管場所の確保も必要ないためです。さらにクラウド上で全社のデータを保管しておけば、本社からいつでも必要な記録にアクセスでき、各拠点からデータを収集する手間が削減されます

結果の記入方法をマニュアル化

全社共通のフォーマットを用意し、記入方法をわかりやすくマニュアル化するのがおすすめです。記入ミスを防止でき、データの取りまとめも楽になります。任意項目をなくす、日付・数値の書式を指定するなど、表記揺れを最小限に抑えるのがポイントです。

運転日報とあわせて一元管理する

アルコールチェック結果は、運転日報や車両稼働記録となるべく同じファイルとしてまとめて記録・一元管理しましょう。アルコールチェック結果表に記録がないドライバーがいるときも、測定・記入忘れなのか、その日車に乗っていないのかをすぐに判断できます。

通信型アルコール検知器の使用

通信型アルコール検知器を使用すれば、測定結果を記録簿に手入力せずとも自動的に結果が保存されます。これにより、記入の手間や記入ミスを削減できます。

 

運転手とのコミュニケーションに関する課題と解決策

よくあるお悩み

ドライバーからの虚偽の申告をどう防げばいいかわからない
アルコールチェックを面倒がるドライバーが多い
・前日の飲酒によるアルコールが検知されるドライバーが多い
・直行直帰の日にドライバーから測定結果の連絡がこない

解決策

①通信型アルコール検知器の使用

通信型アルコール検知器を使用すれば、測定結果を撮影・送信しなくても、検知器とスマートフォンの連携によりほぼリアルタイムで自動的に結果が管理者に送付されます。ドライバーの負担、写真からの数値入力の手間、報告漏れなどを削減できます。

②出勤・退勤時のルーティンにする

現場の協力を得るため、なるべく日々の業務のなかでアルコールチェックを習慣化できるよう工夫しましょう。おすすめは出退勤簿への記入と同時にアルコール検知器で測定する方法です。しばらく運用を続ければ次第に毎日のルーティンとして定着していくでしょう。

交通安全教育の定期開催

「昨晩深酒したがもう抜けているだろう」「飲酒から6時間以上経っているから大丈夫」などの誤った知識を払拭するために、飲酒に関する知識や飲酒運転の恐ろしさを学ぶ交通安全教育を半年に一度などで定期開催するのがおすすめです。

こちらもおすすめ:【安全運転管理者の仕事2023】5分でわかる!事故防止に効果的な安全運転指導法
すぐに使える!社員の心をつかむ交通安全教育のアイデア7選

 

まとめ 事例から学ぶアルコールチェック義務化対応のポイント

ここまでにご紹介したアルコールチェックの運用課題と解決策を踏まえ、忙しい日常業務のなかで、安全運転管理者が無理なくアルコールチェック業務を行うための3つのポイントをまとめます。

日々の業務に習慣として組み込み現場に定着させる

「日々の業務に追加してアルコールチェックも行う」となると、担当者・ドライバー双方の心理的負担が大きくなります。出退勤のチェックや朝礼など、毎日のルーティンに組み込むことで、アルコールチェックを自然に現場に定着させられます。

可能な限り仕組み化し管理者の負担を減らす

測定方法・記録方法のマニュアル作成や通信型アルコール検知器の導入など、アルコールチェックを仕組み化して属人化を解消し、業務を効率化しましょう。最初の準備に多少工数やコストはかかりますが、その後の負担軽減効果は絶大です。また、管理者だけでなく副安全運転管理者や補助者を設定し、負担の分散を図るのも有効です。

危機意識醸成のため、安全運転指導を並行で行う

測定や記録が恒常的に運用できるようになっても、ドライバーからアルコールが検知されれば車両を使うことはできません。飲酒運転に関する正しい知識を浸透させるため、定期的な交通安全教育や普段の安全運転指導で危機意識を醸成しましょう。