2022年3月3日

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緑ナンバー事業者に学ぶアルコールチェックの運用 - 有限会社エクストリーム

2022年4月より改正道路交通法施行規則が施行されることにより、一定台数以上の白ナンバーの自動車を保有する企業での、アルコールチェックが義務化されます。 ポイント2022年4月からは運転前後の酒気帯びの有無について、安全運転管理者による運転者への目視での確認、2022年10月からはアルコール検知器を用いての酒気帯び確認することが義務となります。今までにない業務が加わることになるので、どのようにアルコールチェックを運用してゆけばよいのか、迷われている事業者の方も多いでしょう。 そこで先んじてアルコールチェックが義務化されている一般貨物自動車運送事業者(緑ナンバーを持つ企業)に、アルコールチェックの具体的な運用についてインタビューしました。規制が厳しい緑ナンバーでは、どのようにアルコールチェックの運用をされているのでしょうか? 

目次

1.緑ナンバーにおける、アルコールチェック担当者(運行管理者)の選任基準

2.運行管理者による対面点呼での管理について

3.ドライバーの安全管理に関する取り組み

4.アルコールチェック機器によるチェックの体制について

5.アルコールチェック機器を選ぶ上で意識したいこと

6.2重3重にチェックをして、ヒューマンエラーを極限まで減らす

 

緑ナンバーにおける、アルコールチェック担当者(運行管理者)の選任基準

今回は海上コンテナトレーラーや大型貨物自動車など、緑ナンバー車を多数有する企業『エクストリーム』の代表取締役、加藤博さんにお話をうかがっています。

――緑ナンバーではアルコールチェックについてどのような義務があるのかをうかがいたいと思います。
まず、緑ナンバーでも安全運転管理者を選任されているのでしょうか。

株式会社エクストリーム 加藤博さま(以下加藤さま) 我々緑ナンバーですと、選任するのは運行管理者ですね。白ナンバーでいうところの安全運転管理者と違うところは、運行管理者は国家資格なのです。ですからうちの会社でも、社員に資格取得をさせたうえで運行管理者に任命しています。運行管理者の具体的な業務としては、運行計画の作成、危険防止のための運転者の配置、安全運転の確保などがあります。
アルコールチェックのための目視や点呼、記録の保持なども、運行管理者の業務のなかに含まれます。

――緑ナンバーでは安全運転管理者よりも、広範な責任を持ち、なおかつ国家資格を持つ運行管理者の選任が義務となっています。運行管理者の方が安全運転管理者よりも基準がかなり厳しいですね。安全運転管理者の場合、大まかに年齢20歳以上で、運転管理経験2年以上という選定基準がありますが、国家資格までは必要ありません。

加藤さま 白ナンバーや黒ナンバーに比べると、緑ナンバーの管理体制は、全体的に求められる水準が高いと思います。

――しかし緑ナンバーと白ナンバーは、運送業として営業しているかどうかの区別はあれ、車両の種類には違いがない場合もあり、酒気帯び運転の危険度は変わらないですね。

加藤さま 例えば運転代行も白ナンバーです。人の命を預かる業務という点では我々と変わらないはずです。事故が起こってからでは遅いので、この機会にアルコールチェックが義務化されたのは、良いことなのではないのでしょうか。

運行管理者による対面点呼での管理について

――御社では運行管理者は具体的にどのような手順で運転者の酒気帯び確認をしていますか。

加藤さま 運行管理者や管理予備者が、管理点呼人として対面点呼を行なっています。対面点呼というのはドライバーの状況、体調や酒気帯びの有無。検温確認を行います」
――管理予備者というのはどういった方ですか?

加藤さま 管理予備者は、特定の講習を受けた人です。国家資格のある運行管理者か、講習を受けた管理予備者が点呼を取れます。我が社では事務の職員に運行管理者の資格取得をさせたり、管理予備者の講習を受けさせたりしていますので、いつもだれかしら点呼を取れる人間が事務所に居ます。

――事務所に帰らずに直行直帰する場合は、どのように目視で確認をしているのでしょうか。

加藤さま 直行直帰というケースはありません。緑ナンバーでは基本的には対面で点呼することが義務付けられています。ですから点呼人が出勤する朝3時以前にドライバーが仕事を開始することは禁止しています。そこでしっかりと体調確認、酒気帯び確認をしてから、運転に当たります。帰社する時も同様で、仕事中に体調変化がないか、アルコールを飲むようなことがなかったかを点呼人が確認しています。

――点呼について、よく分かりました。運行管理者の、その他の業務について教えてください。

加藤さま 運行管理者の業務としては、車両管理、スケジュール管理、配送ルートの管理、安全管理、労務管理があります。なかでも一番重要なのは、時間の管理です。例えば残業をさせすぎていないかとか、あとは休憩を取れているかとか。ドライバーの勤務状態を日報から読み取る業務です。手書きの日報と併せてドライブレコーダーでの勤務管理も使っています。

ドライバーの安全管理に関する取り組み

――安全運転のための講習などもされているのでしょうか。外部から講師を呼んで講習をされている会社もあるとうかがっています。

加藤さま 外部の講習はあまりやっていないのですが、年に何回かに分けて注意喚起の社内講習を行なっています。近年あった事故を周知するなどといったことをしていますね。安全運転に関する注意喚起は、半年に1回行うことを義務付けられているんです。ですから、3カ月に1度は各支店ごとに行なっていますね。

――安全運転のためのドライブレコーダーの活用はされていますか。

加藤さま 安全運転の意識は人によりますから、ドライブレコーダーで記録を取っているということは、意味があると思います。記録されているという意識が、運転にも反映されますから。管理する側としても、少しおかしいなと感じた時に、ドライブレコーダーを参照することができる安心感がありますね。

アルコールチェック機器によるチェックの体制について

――アルコールチェック機器はどのように使っていらっしゃいますか。

加藤さま うちではアルコールチェック機器は『ALCGuardianNEXT』を使っています。このシステムは免許をカードリーダーに置いて、出勤のボタンを押した流れで、アルコールチェックをします。

その後アルコールチェック機器に息を5秒間吹きかけて、『アルコールチェックしてください』というアナウンスがあるんですね。そこでふーっと5秒間吹きかける。0の場合だと『アルコール検知されませんでした。いってらっしゃい』とアナウンスがあります。

帰社の際にも同じ手順で、ボタンを押して、同じ手順でアルコールチェックをします。

――据え置き型でPCと接続されていているタイプのアルコールチェック機器ですね。Webカメラで写真なども自動撮影されていて、記録がシステムの中に残るという。改正道路交通法施行規則では、酒気帯びの有無について1年間の記録の保管が義務付けられていますから、アルコールチェック機器で自動的に記録をストックできると、手間が省けますね。

加藤さま 酒気帯びだったら運転させませんから、うちの場合は運転しているということはアルコールチェックをクリアしていることになります。でも記録するという緊張感は大事ですね。

 

アルコールチェック機器を選ぶ上で意識したいこと

――アルコールチェック機器を選定するうえで気をつけるべき点もあったら、教えてください。

加藤さま アルコールチェック機器は性能に差があります。前の日に飲んだものが出てしまうこともありますし、ものによってはパンのイースト菌や口腔洗浄液で反応してしまうこともあるようです。

――酒気帯び運転は「呼気中にアルコール濃度が0.15mg/Lを超えている状態で運転をしていた場合」に、当てはまりますね。御社の場合だとアルコール濃度の許容される数値はあるのでしょうか。

加藤さま 緑ナンバーの場合、0.00mg/L以下でなければ、酒気帯びとみなされます。そのため、アルコールチェック機器をそのように設定して運転する基準としています。それと点呼の時の目視とあわせて確認します。ただ、先ほど言ったように実際には飲酒していないのに、アルコールチェック機器で反応してしまう時は時々あります。前の日のお酒が残っていたり、個人の体質によってもアルコールが残りやすいかそうでないかは違いますから。今までの5年間に2、3回ぐらい酒気帯びの反応がありました。

――酒気帯びと判定された場合はどうするのですか?

加藤さま 判定が出ている以上運転できないですから、判定が出なくなるまで待機ですね。それでも反応が出てしまうなら、交代させるしかありません。酒気帯びの反応が出てしまうと、業務に大きな支障が出ます。だからなるべく夜の深酒を慎むとか、健康的な習慣を心がけることを含めた、生活管理もするようにしています。

――導入にあたっては、アルコールチェック機器そのものの精度のチェックも必要ですね。

加藤さま 携帯用のスティック型のアルコールチェック機器は、誤反応が多いものもあるようです。ただ据え置きのアルコールチェック機器ならではの欠点もあります。電源が必要なので、停電の時は使えません。ですから、うちでは停電時用に携帯用のスティック型のアルコールチェック機器も用意せざるを得ないんですね。

――2011年に停電時のアルコールチェックについて議論になったのですが、国土交通省は「例外にはならない」という見解でした。「『緊急輸送なのでスピード違反してもいいか』と問われ、警察は『いいよ』とは言えない。それと同じこと」ということなのです。

加藤さま そうです。ですから、PC接続の据え置き型を持っていても、電源無しで使えるアルコールチェック機器も必要なのです。

――他にアルコールチェック機器導入にあたって気をつけるべきことはありますか?

加藤さま 盲点なのはメンテナンスの費用です。例えばアルコール検知器自体を安く購入したとしても、フィルターやセンサーの交換時にコストがかかる場合があります。我々もフィルターの交換には毎年コストがかかっています。

――御社の据え置き型の機器はどのようにメンテナンスされているのでしょうか。

加藤さま ストローを毎日塩素消毒して、フィルターは1年に1度交換しています。ストローはドライバー同士で使い回しするわけにもいかないので、事務の社員が塩素消毒しているわけです。毎回取り替えるのが理想なのですが、専用のストローで1本150円ぐらいするのです。そういったメンテナンスの手間やコストは覚悟する必要がありますね。

2重3重にチェックをして、ヒューマンエラーを極限まで減らす

――御社『エクストリーム』の安全運転にかける意気込みをお聞かせください。

加藤さま うちの場合は点呼人による確認と、アルコールチェック機器での確認、そして二重に記録も残しています。それだけではなく、うちは入口の自動ロックでもチェックしているのです。指紋認証がないと出入りができませんし、カメラ映像と過去の履歴も残しています。

――何重にもチェックされているのですね。

加藤さま 実はつい最近我が社も大きな事故を起こしてしまいました。昨年12月に愛知県で起こった玉突き事故です。うちの大型トレーラーが追突事故を起こし、車24台が絡む玉突き事故に発展したのです。12人もの人が怪我をしました。幸い死亡事故はなかったのですが、大変なことになってしまいました。

――大変な事故でしたね。

加藤さま その事故によって、改めて大型トラックを持つことの責任を感じました。走行中にトラックが少しでも触れてしまえば、人間はもちろん、車さえも撥ね飛ばしてしまうのが大型トラックです。事故を防ぐには何重にもチェックしても、チェックしすぎることはないと痛感しました。

白ナンバーでもアルコールチェックが義務化された背景として、20216月に千葉県で、飲酒運転のトラックに下校中の小学生が撥ねられた痛ましい事故があります。事故が2度と起こらないように、安全チェックの強度を上げていくことは意味があるはずです。今回の法改正を未来の安全につなげていきたいですね。