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社有車の車内カメラはプライバシー侵害?搭載されている機能は?

社有車に車内カメラの設置を検討している場合、車両を運転する従業員に対してプライバシーの侵害に当たるのかどうか気になっていませんか。「業務効率化や安全性からもカメラは車内も映せた方がいいと思うが、プライバシー侵害となってしまっては……」と、導入のネックとなっていることもあるかもしれません。そこで今回は、車内カメラがプライバシー侵害に当たらない理由と搭載機能、導入のメリットなどを詳しくお伝えします。

目次

1.社有車の車内カメラはプライバシー侵害には当たらない

2.社有車の車内カメラに搭載されているもの

2-1.位置情報の取得・記録
2-2.車外の録画
2-3.音声の録音
2-4.加速・停止・走行速度の記録

3.社有車に車内カメラを設置した際の効果

3-1.従業員の安全性向上
3-2.行動把握による無駄の削減
3-3.管理者の負担軽減
3-4.コストの改善
3-5.勤怠管理業務の効率化

4.映像・音声の利用目的や範囲を従業員と決めておくことが大切

5.まとめ

 

社有車の車内カメラはプライバシー侵害には当たらない

結論からいえば、原則としてプライバシー侵害には当たりません。
理由としては、社有車を利用していること・就業時間内に乗車していることが挙げられます。従業員を管理する会社側の立場からすると、業務内容を記録し、管理することは業務の一環と考えられるためです。
ただし「原則」という言葉を使ったとおり、記録した内容の使用目的が業務に関連している場合に限りプライバシー侵害には当たらないということから「原則」としています。
業務に関連している場合とは、具体的にいえば、従業員の安全性向上、業務効率化(走行ルートの見直し、日報作成)などのためです。また、正確な記録を残せることから、従業員による社有車の私的な利用を防ぐため、または事故や事件に巻き込まれた時に対するリスクヘッジの意味合いも含まれます。
そもそも社有車とは、会社組織で利用する車のことであり、あくまで業務に必要なものです。そのため車内カメラで記録、管理することは会社のリスクマネジメントの観点からすると当然のことといえるでしょう。
とはいえ、プライバシー侵害に当たると判断されることがあるとすれば、業務に関係のない会話を調べる、記録映像を漏洩させるなど、本来の目的から逸脱した行為が発生した場合です。そのような違法行為が発覚すれば、従業員からプライバシーの侵害として訴えを起こされる可能性があります

社有車の車内カメラに搭載されているもの

社有車の車内カメラには、どのような機能があるかご存じでしょうか。まずは代表的な機能について紹介します。

・位置情報の取得と記録
・車外の録画
・音声の録音
・加速・停止・走行速度の記録

それぞれ解説します。

位置情報の取得・記録

車内カメラにGPS機能が搭載されていれば、位置情報の取得と記録が可能です。位置情報を取得できれば、業務の効率化、コスト削減につながります。なぜなら、走行状況をリアルタイムで捕捉できるのはもちろん、走行ルートについても確認できるため、ルートに無駄がないかチェックできるからです。
走行ルートに無駄がないかチェックできれば、ガソリン代の節約にもつながるため、コスト削減にもなるでしょう。また、急な依頼などがあった際にも近くを走る社有車に連絡して、対応してもらうことも可能となります。
最短ルートで業務を進められることで効率的に、少ない人数でも仕事をまわせるようになるため、運送業界の課題でもある人材不足の解消にも役立つかもしれません。このように、位置情報の取得と記録は、業務の効率化とコスト削減に直結する機能といえます。

参考記事:2024年問題とは?物流業界に生じる問題や課題、対策まで解説 |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

車外の録画

車内カメラには、前方だけを録画するタイプと、後方も録画できる2カメラタイプがあります。前者では、追突事故や前方で起きた事故を録画でき、後方では昨今問題になっている煽り運転に関する証拠映像も録画できます。事故に関する証拠映像を記録できるため、万が一の際に必ず役立つはずです。
また、カメラによっては常時録画で、古いデータが削除され新しいデータに上書きされるタイプと、事故が起きた時にだけ録画を開始するタイプがあります。事故が起きた時にだけ録画を開始するタイプは、急ブレーキや車に衝撃があった時、自動的に録画がスタートします。タイプによって価格が異なるため、どのようなタイプが必要なのかは会社によって異なります。最適なものを選ぶようにしましょう。

音声の録音

車内カメラは映像だけでなく、音声もしっかり録音できます。たとえば、事故にあった際には当事者間の会話を記録できるため、言った言わないの無駄な論争を回避できるでしょう。また、先にあげたように煽り運転の被害にあった時なども、加害者側から何か暴言などを投げかけられることもあるかもしれません。そんな時は、この音声の録音機能が役に立ちます。しっかり音声を録音できれば、被害を立証できるでしょう。
音声の録音機能はオフにすることも可能なため、通常の業務中はオフにしておけば、会話などを記録されることはありませんので安心です。

加速・停止・走行速度の記録

加速度センサーがついているタイプならば、加速・停止・走行速度を記録できます。この記録が取得できれば、各従業員の運転スタイルを把握できます。つまり、危険な運転が多い従業員を把握できるため、該当者には個別に安全運転に関する指導を行えるでしょう。法定速度を守っているのか、急な発進や加速、急ブレーキなどに関するデータを収集できれば、万が一の事故の際に、会社側が支払う修理費や保険料についても、負担増加を避けられるかもしれません。
社有車で発生する事故については、事故を起こした従業員本人はもちろん、雇っている会社側にも使用者責任が問われます。事故のリスクを少しでも減らすためには、各従業員の運転状況、危険運転の可能性について把握しておくことがリスクマネジメントとなります

社有車に車内カメラを設置した際の効果

社有車に車内カメラを設置することで得られる効果としては、安全性向上、行動の把握、管理者の負担減、コスト改善、管理業務の効率化があげられます。いずれの効果も会社、従業員双方にメリットがあるようです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

従業員の安全性向上

まず、従業員の安全性向上についてです。車の運転において、常に事故のリスクがつきまといます。事故を起こす加害者になることもあれば、被害者になることもあるでしょう。
いずれにせよ、事故を起こすことで、怪我をする、あるいは最悪の場合、命を落とす可能性もあります。従業員が社有車を利用する事業を営む会社は、当然ながら従業員の命と安全を守る責務があります。営利企業として、生産性や業務の効率化を追い求めながらも、同時に安全に配慮した指導を行わなければなりません。
車内カメラを設置することで、走行状況や運転スタイルについて記録できるため、データを元に適切な安全運転指導を行うことが可能となります。従業員からしても客観的なデータを元に指導が行われるため、納得しやすいのではないでしょうか。安全運転講習などを定期的に行い、安全運転に関する啓蒙を行うことも大切ですが、従業員個別にそれぞれに安全性向上のための指導を行うことも大切です。車内カメラに記録されたデータを元に、適切な指導を心がけましょう。
また、車を運転する従業員も「車内カメラで見られている」ということを無意識で理解していることも、安全に運転しようという意識にさせていることもあるかもしれません。

参考記事:ドライブレコーダーの選び方!目的に合わせて機能をチェック |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

行動把握による無駄の削減

運転中の行動を把握できることで、業務の無駄を削減できます。具体的には、走行ルートに無駄がないかを確認できます。これによって、ガソリンの節約、最短距離での業務活動が行えるようになるでしょう。従業員からすると、行動を監視されているように映るかもしれません。しかし、管理する会社からすれば、利益を上げるために省ける無駄は省きたいもの。無駄を省くことで得られるメリットをしっかり従業員に伝えることができれば、納得してくれるはずです。
また、行動を把握できることで、万が一の事故の際にも映像や音声が証拠となり、本来なら負担しなくてよかった出費を抑えることにもつながるかもしれません。事故が起きた時の修理費や、保険なども削減できるなら削減したい無駄といえます。
車内カメラに記録されたデータをもとに、事故原因や、従業員側にどれだけ非があったのかも明らかとなるため、この点も車内カメラを搭載する効果といえるでしょう。

管理者の負担軽減

車内カメラを社有車に導入することで、車両情報や社有車を運転する従業員情報を一元管理できるようになるもの、効果のひとつです。
「走行ルートに無駄はなかったか」「従業員の運転傾向」などの情報をデータとして可視化できます。一方、車内カメラがない場合は、口頭で各従業員に上記の情報をヒアリングする必要があるなど、手間が大きいといえます。
その点、車内カメラを導入すれば、記録されたデータを元に指導が行えるため、管理者側の負担を軽減できるでしょう。一般的に、事業で社有車を利用する会社の場合、運転日報として記録を残す義務が発生しますが、中には記録したデータを活用して運転日報を自動作成できるタイプもあります。
記録を残す項目も多岐にわたるため、書類作成を手書きで行う場合、どうしても手間がかかります。その点、運転データを元に運転日報を自動作成できれば、従業員の手間を省けることはもちろん、書類の確認と管理を行う管理者の手間も大幅に軽減できるはずです。書類提出の催促などをする必要がなくなり、データも正確な書類ができ上がるため、その時間を他の業務に当てることが可能となるでしょう。

コストの改善

無駄の削減につながるところですが、無駄がなくなることで、結果的にコスト削減を実現できます。たとえば、適切なルートで走行できるようになれば、ガソリン使用量を抑えることができ、コストを抑えられます。
同時に、効率的に仕事を回せるようになれば、無駄に人材を獲得する必要がなくなるため、人件費の部分でもコストを改善できるでしょう。さらに社有車で事故が起きた場合、会社は車の修理代や保険料を負担しなければなりません。当然ながら会社にとって出費となるため、そのコストも抑えられるのでれば、それに越したことはないでしょう。
車内カメラを導入すれば、万が一の事故の時にも証拠となる映像や音声を残せるため、責任の所在がはっきりし、無駄なコストを抑えられる可能性があります。

勤怠管理業務の効率化

走行ルートが記録されることで、夜間の活動や深夜の帰宅なども把握できるようになります。従業員に負担がある労働環境を捕捉できるようになるため、管理者は労働時間の短縮を進言するなど改善できるようになるでしょう。管理者にとっても、データが自動的に記録されるため、勤怠についても正確にデータを収集できます。
無駄を省くことにもつながり、勤怠管理に関する業務負担も軽減できるようになるでしょう

参考記事:法人向け通信型ドライブレコーダーを導入するメリットとは |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

映像・音声の利用目的や範囲を従業員と決めておくことが大切

冒頭でも伝えたとおり、車内カメラで勤務時間中の行動データを撮影、記録しておくことは、原則プライバシー侵害には当たりません。しかし、それでも従業員からすれば行動を監視されているような気持ちになり、あまり気分のいいものではないと考える人もいるでしょう。
そのため、車内カメラを導入するにあたり、会社は、従業員との間で記録するデータや、その利用目的と範囲を話し合い、理解を得ることが大切になります。
音声データも録音できる車内カメラを導入するのであれば、基本的にオフにして、会社と管理者は映像のみを確認する。もし、事故が発生した場合のみ音声もチェックする、といったように具体的にデータを利用するときの方法についても擦り合わせておきましょう。
業務時間中での記録保存とはいえ、従業員のパーソナルな情報が保存されてしまう可能性もあります。そういったパーソナルなデータを、管理者でもない別の従業員が閲覧できないよう、保存したデータの管理、プライバシーを守るためのセキュリティについて万全の体制を構築する必要があります。
事前に、社有車に関するルール作り、社内規定などを構築しておけば、プライバシー侵害に関して従業員と揉める可能性が低くなるので、導入に関して理解を得ることと、ルール作りはしっかり行うようにしましょう

参考記事:ドライブレコーダーの選び方!目的に合わせて機能をチェック |お役立ち情報|パイオニア株式会社 (pioneer.jp)

まとめ

社有車に車内カメラを設置することは原則プライバシーの侵害には当たらないものの、無用なトラブルを避けるためには、事前に従業員の理解とデータの活用ルールを明確にしておく必要があります。
あくまで安全のため、事業に関係することにしかデータを利用することはない、ということを従業員に伝え、気持ちよく仕事に取り組める環境を作ることも会社側の責務です。
そして、導入の理解とルールの作成ができれば、車内カメラを設置しておくことはメリットが多く、安全性の向上や指導、コストの削減、業務の効率化など、事業を展開するうえで欠かせないものとなるでしょう。また、万が一の事故の時などにも記録されたデータは役立ちますので、社有車に車内カメラ設置を検討している方は、ぜひ進めてみてください。