バスやトラックによる輸送会社やタクシー会社では、運行計画の作成が重要になってきます。安全運転管理の観点からみると、無理な長時間運転によるドライバーの過労運転を防ぐことで、事故防止につなげられるでしょう。このように自動車運送業においては、運行計画は必要不可欠な存在となっています。今回は、運行計画作成のポイントを解説します。
2-1.行き先別に経路を決めておく
2-2.運転者のことを考慮した運転時間を設定する
3-1.運行計画書に記載された内容が順守されているか
3-2.客観的なデータを記載してあるか
3-3.車両点検結果を記載してあるか
5-1.車両を適切に配置できるため
5-2.業務を効率化できるため
5-3.ドライバーの安全管理を行えるため
5-4.複雑な運行業務を行えるため
6-1.社内環境を整備する必要がある
6-2.汎用性も大切になってくる
まずは運行計画の立て方についてですが、一定数の営業車両を有する事業所では安全運転管理者を専任しなくてはなりません。
そして、安全運転管理者は運行計画書や運行日誌を業務として作成することとなります。ここでは、運行計画書と運行日誌の定義について解説します。
運行計画書とは、ドライバーの安全運転を確実なものとすると同時に、長時間運転を防止し危険運転などから起きる事故を防止する目的で作られます。同じような書類に、運行指示書がありますがこれとは異なります。運行計画書は業務で利用するので毎日作成しますが、運行指示書は基本的に2泊3日以上の運行の際に作成する書類です。
運行計画書はドライバーが限られた時間の中で、効率よく安全に業務を遂行するために欠かせない書類です。長時間労働を防止することや、無駄を省いてより効率の良い運行計画を立てることが安全運転管理者に求められています。
運行計画書があれば、管理者とドライバーが業務を共有するツールとして利用できます。お互いに「いつ・どこで・何をすべきか」を把握できます。}
また、運行計画書があれば「何時に届く予定?」との荷主からの問い合わせに、ドライバーに連絡をとることなく即答することが可能となります。
運行日誌とは、ドライバーが業務にて車両を運行した際に記録を残すための書類のことで、運転日報とも呼ばれています。
運行日誌の書式は各企業独自で作られることが多く、自社に適合した運行日誌を安全運転管理者が作成します。基本的に運行日誌は運行計画と比較できるようになっており、運行日誌を確認することで改善すべきところを見出すこともできるため企業内の業務改善に役立ちます。
しかし、面倒だということでドライバーが「後でまとめて記載した」「いわれたから書いているだけ」になってしまうと、有効な情報を取得できません。安全運転管理者とドライバー双方が納得の上で、よりよい業務をするために記載しましょう。
運行計画書は、ドライバーの安全運転を確保するために作成します。休憩を取らないような無計画な長時間に及ぶ運転すると、居眠り運転につながる可能性が高くなるでしょう。
そうなると、当然ながら事故を起こすリスクも高くなってきます。運行計画書を作成し、これに従って運転することでドライバーの過労運転を防止し、適切な安全運転ができるようになるのです。ここでは、運行計画書の作成ポイントを解説します。
運行経路をあらかじめ決めておき、目的地別にどの経路で運行するか運転計画書を使用してまとめましょう。そうすることで運転時間の予測ができて、経路上で起こるリスク予測がしやすくなります。
また、時間帯によって経路上で渋滞となることが予測されていれば、その旨も記載しておくことでドライバーのイライラを解消できます。
渋滞にハマッて時間ロスが発生し、目的地への到着が遅れるかも知れない場合は、う回路も代替案としておけばドライバーの現地判断に頼らなくてもすむでしょう。
また、運行計画書では運転時間も考慮しなくてはなりません。運転時間は、先に決めた経路にて予測できますが、状況における計画を立てる必要もあります。
たとえば、道路の大規模工事やイベントによる交通規制など、いつもと違う変化を察知して、運転時間を考慮した迂回ルートの計画も重要なポイントです。
運行日誌は、ドライバーの運行状況を把握することを目的として作成します。適切な運行計画書を作成しても、違う経路を運行したのでは意味がありません。
運行日誌をきちんとつけることで、ドライバーが無理な運転をしていないか、運転計画書をきちんと守っているかを把握できます。また、運行計画書が適切であったかの見直しにも役立ちます。
運行日誌を作成するポイントは、運行計画書に記載された運行経路や運行時間が守られているか確認できるようにしておくことです。
実際に運行した経路と時間を、運行計画書と比較できるようにしておくことがポイントになります。特に、計画書の経路や時間と実際の運航に差異がある場合は、それが直ぐにドライバーに分かる工夫も必要です。
たとえば、イベントがあるのでいつもの経路と違う経路を指定した場合、ドライバーが間違えていつもの経路を運行していても、ある地点で間違いに気づければ、渋滞に巻き込まれることなく運行できます。
また、ドライバーの自己申告だけでなく、走行メーターや燃料計の数値など客観的な情報も記載できるようにしておくのもポイントです。
ドライバーを疑う訳ではありませんが、もしかするとチェックすべき所でチェックしないで、運行計画書に合わせて後で一括記入することも考えられます。
客観的なデータを記載することで、ドライバーもきちんと所定の場所でチェックするようになりますし、照らし合わせることで運行計画書の見直しに役立ちます。
毎日行う車両点検結果も記載できるようにしておくと、ドライバーと車両の両方の状況確認が可能です。車両点検は毎日行なう点検であり、別紙の点検表に点検内容を記載します。その点検表とリンクした形で、最終の点検結果を運行日誌に記載できるようにします。
この際、極力ドライバーの手間を省く工夫が必要です。車両点検を行なった結果を二重に記載することとなるため、ドライバーに負担がかからないように工夫するのがポイントです。
運行計画書や運行日誌はドライバーの長時間運転をなくすことで、事故防止に大きな役割を担っています。また、適切な運行ルートと時間配分によって、業務の効率化を図れるため便利です。
しかし、手書きでの運行計画や運行日誌には限界があるのも事実です。最適な運行計画を立てても、業務中はドライバー任せになってしまい、本当に運行計画書どおりに業務をしたかは運行日誌から読み取るしかありません。
そこで、運行計画書や運行日誌を可視化できる運行管理システムを導入すれば、GPS機能でリアルタイムに運行業務を可視化してさらなる業務効率のアップが期待できます。
運行管理システムを導入すると、これまでのアナログ的な管理ではなく全てを可視化できます。現実的な問題としていかに適切な運行計画書を作成しても、その通りにドライバーが実行しているかは自身のみが知ることです。
そのため、安全運転管理者は運行日誌に記載してある走行距離や燃料計の客観的情報から、速度やルートが運行日誌通りであるか検証しなければなりません。
仕事の煩雑化につながりかねませんが、運行管理システムを導入することで解決します。GPS機能にてドライバーがどこを運行しているのがリアルタイムに把握できて、運行日誌さえもシステムが自動作成する機能もあります。
運行管理システムにはさまざまな機能が搭載されており、車両の稼働効率を考慮しつつ効率的に運行するエリアやルートを割り当てられます。
この時には、ドライバーの拘束時間や休憩時間など、労務管理を考慮しつつ割り当てる必要があります。人の手によってさまざまな条件をクリアしつつ、効率的な車両配置を実行するには無理があります。
運行管理システムを使うと、さまざまな条件をクリアして効率的に運行できるエリアやルートを割り当てることが可能です。
さらに、可視化できるので途中で何らかのトラブルがあった場合も、即座にルートを変更して業務に支障をきたすことがありません。
運行管理システムを導入すれば、先に解説した車両を適切に配置することも可能になります。その他にも、運行管理システムには色々な機能があり、他システムと連携させることで業務を効率化できます。
たとえば、デジタコと連携させることでデジタコの精度の高い情報を取り込んで、より燃料を節約できる走行プランを提案もできて、燃料のコストカットが可能です。
さらに、これまで安全運転管理者が運行日誌から読み取っていた情報を、システムが計算して現状を瞬時に把握できます。また、システムを活用することで、運行日誌などの記入もほぼ自動で作成できるため従業員の負担が軽減します。
このように運行管理システムがあれば、企業内のさまざまな業務を効率化できます。
先に少し触れていますが、運行管理システムがあれば運行日誌の作成もほぼシステムが代行します。これまで運行ルート上の定められたところでチェックすべき項目も、システムが自動で行なうのでドライバーの負担が軽減します。
また、これまでドライバーからの自己申告だった運行日誌の内容も、システムが取得する正確なデータとなるためより詳しい労務管理が可能です。
ドライバーが気兼ねしてこれまで虚偽の申告をしていたとしても、実際のところは分かりませんでした。運行管理システムがあれば、全て本当のデータが取得できるため、これまで長時間運転となっていたことも判明します。
その結果、適正な運転時間を再構築してドライバーの安全を確保できます。また、運転中の急発進、急ブレーキ、速度超過などの詳細な運行情報も取得可能となるため、このようなドライバーへの安全教育も事故防止につながるでしょう。
運行計画書を作成するのは、会社が専任した安全運転管理者が行ないます。その安全運転管理者には、豊富な経験を積んだベテランを任命することがほとんどです。運行計画を立てるには高いスキルと経験が必要であり、誰もが計画できるものではありません。
このような人材は人手不足などから少なくなっており、他の者がスキルを身につけるにも時間がかかるのがネックとなっています。
ところが運行管理システムがあれば、必要なスキルや経験値がインプットされており、マニュアルどおりに操作すれば、誰もが運行計画書を作成することができます。法的な条件もシステムがチェックして、全て問題をクリアした運行計画を立てることが可能です。このように、複雑な運行業務も管理システムがあれば、熟練の社員がいなくても安全な運行業務ができます。
運行業務全般をシステム化する運行管理システムは、メリットが多く頼りになるシステムです。しかし、運行管理システムにも注意点があります。
これまで運行計画書や運行日誌を手作業で作成して、日誌への記載も手書きであり管理方法も紙をファイルに綴じるといった、アナログ的な会社の場合はまずは社内環境を整えるところから始めなければなりません。
リアルタイムに車両の動きを知るなら、各車両にGPS装置を取り付ける必要がありますし、コンピューターも最新のスペックにする必要があるかもしれません。
さらに、社内でのWi-Fi環境の構築や社内LANの構築も必要になります。このように、運行管理システムに対応できるように、社内環境を整備する必要があります。
運行管理システムにもさまざまなタイプがありますが、他の外部システムと連携できることが大切です。システム自体がパッケージ化されていて、運行管理システムだけしか利用できないのではよくありません。
たとえば、労務管理システムと連携することで、ドライバーの深夜手当、残業代の計算が自動でできます。また、勤怠管理システムと連携させることで、全てのドライバーの出勤記録が取得できるなど柔軟なシステムであることが大切です。
運行計画の立て方や運行管理システムについて、詳しく解説してきました。運行計画書は、ドライバーのさまざまな安全を確保するために必要な書類ですし、管理者にとっても車両の状況を知る上で重要なツールとなっています。
また、運行日誌についても適切に運行業務できているか、確認する重要な書類となります。しかし、手作業でするには労力が必要ですし、計画を立てるには経験豊富な従業員が必要です。
そこで、運行管理システムを導入すると、熟練の社員がいなくても運行計画の立案や、全ての運行業務の効率化ができるメリットがあります。運行管理システムを導入するなら、汎用性に高いシステムであるかを確認することをおすすめします。